「砂糖は脳にいいんですよ」という謎のCMが生まれた背景窪田順生の時事日想(1/4 ページ)

» 2015年02月17日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 先週末はバレンタインデーだった。と思ったら、もう街ではホワイトデーの垂れ幕を出して、キャンペーンが始まっている。

 青春時代はこの季節になると、まるで傷をなめ合うかのようにヤロウ同士で群れては、「チョコレート会社のキャンペーンにのせられてみんなアホだよなあ」なんて強がっていたが、いざ大人になってみると、そんなニキビ面の中学生の分析もあながち間違っていなかったことが分かる。

 諸説あるが、平賀源内が「土用丑の日に鰻(うなぎ)を食べると夏バテしない」キャンペーンを編み出してくれたおかげで、夏場はバタバタ潰れていた鰻業界がよみがえったなんて話もあるように、日本人は昔から食にまつわるキャンペーンにのせられやすい。今でもテレビの情報番組で、納豆やらヨーグルトが体にいいですよみたいに紹介されると、スーパーの棚から一斉に消えるのはご存じのとおりだ。

 子どものころは想像すらできなかったが、実はこういう“キャンペーン”こそが社会のなかで重要な役割を担っている。菓子業界におけるバレンタイン商戦を取材すると、いかにみなさんがこの1〜3月の売り上げにかけているか気迫のようなものを目の当たりにする。

 ここでの稼ぎで一家を支える方たちもたくさんおられるので、踊る阿呆に見る阿呆ではないが、やいのやいの言わずにこういうキャンペーンにはガッツリとのっかったほうが社会のためにもいいんじゃないのとすら思う。

 ただ、その一方でなかにはのりたいけれど、そこはどうなんだろうとやや腰が引けてしまうキャンペーンも少なくない。その代表がバレンタインチョコの原料にもなる「砂糖」だ。

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