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» 2015年02月13日 09時30分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:スズキが新工場を作る意味――インド自動車戦争が始まる (1/3)

1月末、インド・グジャラート州で新工場の定礎式を行ったスズキ。実は同社は1980年以来、35年もの長きにわたりインド市場に取り組んできた。そのスズキがこのタイミングで新工場を設立する意味とは……?

[池田直渡,Business Media 誠]

 1月28日、スズキはインドのグジャラート州で新工場の定礎式を行った。21世紀に入って以来、中国マーケットを巡って激しい攻防を繰り返して来た自動車メーカー各社は、ついにアジアリーグの第2ラウンドに突入し、インドラウンドでの本格的なマーケット争奪戦が始まる。スズキの新工場は実はその象徴となる出来事と言える。

ay_suzuki02.jpg 新工場定礎式。スズキはインドに新会社を設立し、自動車生産会社として2017年中に操業を開始すると発表した。インド自動車戦争の幕開けである

 外務省が国連人口基金に基づいて発表している世界各国の人口ランキングを見ると、インドは中国に次いで人口第2位。しかし中国の13億8560万人に対して、その数は12億5310万人と接近しており、一人っ子政策で人口増加に人為的な引き締めをかけていた中国と違って人口はまだまだ伸びる。15年後にはインドが中国を追い越すという予測試算もある。

魅力的なインド市場――まもなく経済成長率で中国を抜く

 現時点で、インドはすでに市場として十分に魅力的な上、経済成長率が高く、国民所得が増えればさらなる将来成長が見込めると世界の自動車メーカーは見ている。ウォールストリートジャーナルは、ゴールドマンサックスの見通しとして、2016年にインドが経済成長率で中国を追い越すという予測を伝えている(参照リンク)。グラフは見事な中国の右肩下がりとインドの右肩上がりを表したX字を描いており、「次の栄冠はインド」「中国を上回る6.8%を記録」という刺激的な文章が並ぶ。

 しかも1991年の経済改革以来、インドマーケットは経済的に比較的オープンで、中国のように役所という名目(事実上の共産党)の審査で、進出企業の命運が左右されるようなことはない。インドでは日本の常識では考えられないほど下級官吏による露骨なワイロの要求などがあるとはいえ、自由経済諸国にとっては、中国よりはるかにルールが分かりやすい。

 2015年現在、インドの景気は循環的な回復基調にあり、さらに昨年5月には経済改革に強い意欲を持つモディ新政権が誕生した。インド国民はナレンドラ・モディ新首相が、長年グジャラート州の首長として行った強力な経済改革の数々をインド全土にもたらすことを強く願っている。汚職の追放にも力を入れ出し、ようやくその面で中国より高く評価されるようになった。

 インドの魅力はそれだけではない。労働単価と土地も安い。つまり世界各国に輸出する製品を作る世界の工場としての価値も見込めるわけだ。地政的に見てアジアと欧州の両方のマーケットをにらんで輸出拠点となり得る上に、アフリカへのアクセスも悪くない。しかもインド政府は、輸出産業への多くのインセンティブ制度を用意しているので、進出にあたって、税制や補助金など数々の恩恵を受けられる可能性も高い。生産拠点として見た時、本国からのオペレーションが英語で無理なく行える点もかなり効いてくるだろう。

 もちろん、今後インドが経済成長を続ければ当然労働単価は上がっていくが、その分成長余地がたっぷり残された巨大な国内マーケットが豊かになるというわけで、自動車生産輸出国として、あるいは自動車消費国として、どちらに転んでも当面は損はない。

 その結果、現在では世界各国の自動車メーカー十数社がインド進出にGOを出した。ルノー、スズキ、GM、メルセデス・ベンツ、ホンダ、フィアット、ヒュンダイ、トヨタ、フォード、シュコダ(フォルクスワーゲン傘下)、BMW、三菱、マツダ、ボルボ、デーウ……という具合だ。これにインドの民族系メーカーであるヒンダスタン、タタ、マヒンドラ、フォースが加わる。

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