NFLから学ぶ人材スカウト術元アメフトプレイヤー・有馬隼人さんに聞く(2/4 ページ)

» 2015年02月05日 08時00分 公開
[伏見学,Business Media 誠]

戦力が均衡する仕組みになっている

――NFLのドラフト制度に人気の秘密があるということですが、どういうことでしょうか。

 NFLのドラフトは、完全ウェーバー方式を採用しており、前シーズンで最下位のチームから順番に新人選手を指名します。すなわち、前年にチーム成績が悪ければ悪いほど、より優れた選手を獲得できるようになるのです。

 加えて、NFLはサラリーキャップ制で、各チームが所属選手に支払う年俸総額の上限が決まっています(※編集部注:入場料や放映権などリーグ収入の一定の割合が選手の総サラリー額として割り当てられ、それを全32チームで割ったものがサラリーキャップ額となる。割合は毎年変動し、2014年は1億3000万ドルだった)。つまり、たとえ活躍して年俸が上がってもチームのサラリー事情によっては移籍しなければならず、MLBのニューヨーク・ヤンキースのように、高額プレイヤーを何人も抱えるようなチームを作るのはNFLでは不可能なのです。

 こうした2つのルールによって、おのずと各チームの戦力は均衡し、毎年どのチームが優勝するか分からないという状況が生まれているのです。これがNFLが人気である大きな理由です。

 さらに、ドラフトに焦点を絞ると、各チームが選手を指名するまでに10分間の持ち時間があります。この短時間にほかのチームとドラフトの指名権や選手をトレードするなど、実にさまざまな駆け引きが行われているのです。ドラフト会議の様子は、会場での観覧はもちろんのこと、全米にテレビで生中継されています。各チームの戦略室には定点カメラが設置されていて、ゼネラルマネジャー(GM)たちの動きをリアルタイムで見ることができるなど、エンターテインメントとしての要素が強いです。これもNFLの魅力と言えるでしょう。

――ドラフト会議中だけでなく、シーズンを通して水面下で白熱するトレード交渉を行っているのですか。

 もちろん。GMやスカウトチームは年中動き回っていて、シーズン中にもドラフト指名権のトレードがあったり、他チームの現役選手が欲しくて未来の指名権とトレードしたりしています。

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