「修理承り票」に印紙を貼らず3300万円の過怠税知っているようで知らない「正しい印紙の貼り方」

» 2015年02月03日 06時00分 公開
[田辺直樹,Business Media 誠]

さまざまな契約書や受取書に貼る「印紙」。身近な税金ながらその仕組みはとても複雑で、契約書を前にして「印紙が必要なのかよく分からない」と悩んだ経験のある人もいるのでは?

本書は、印紙の貼り漏れや貼り過ぎを避けたいという人のために、ビジネスでよく交わされる契約書等を例にとり、課否判断のポイント、税額計算の仕方を解説しています。

 「そもそも印紙税って何?」という人はステップ1[印紙税の基礎知識]へ。
 どんな契約書に印紙がいるのか、いくら貼ればいいのかを知りたいときはステップ4[契約書例で見る印紙税の判断ポイント]へ。

誰が、どこから読んでも役に立つ、印紙税実務の入門書です。


 「えっ、『修理承り票』に印紙がいるの?」。そう思った人も少なくないのではないでしょうか。

 一般に「印紙」というと、契約書や領収書、手形などに貼るものというイメージが強いかもしれませんがそれだけではありません。家電やPCなどの修理を請け負った際に出す「修理承り票」も、修理する箇所や方法などが書かれているものは「請負に関する契約書」と見なされ、印紙税が課税されます。

 かつては大手スーパーのダイエーが、大阪国税局の税務調査で印紙税約3000万円の納付漏れを指摘されました。2012年5月15日付の毎日新聞によれば、自転車修理の請負契約の伝票など約15万枚分に印紙を貼っておらず、追徴された過怠税は約3300万円とみられています。

 他の商品についても領収書に印紙の貼り忘れがあったといい、店舗従業員の教育不足という面があったことは否めません。それにしても、全国の各店舗で直営する自転車修理コーナーで客に渡す「修理承り票」に印紙が必要になるとは、おそらく思いもよらないことだったのではないでしょうか。

修理代金を記載していれば印紙はいらなかった!?

 自転車の修理請負は請負契約に該当し、その伝票は印紙税額表の「第2号文書」となります。記載金額が1万円以上もしくは契約金額が不記載の場合には、印紙を貼る必要があるのです。

 例えば1万円以上100万円以下の場合は200円。1万円未満であれば非課税ですが、金額の記載がない場合にも200円の印紙税がかかります。

 ここで少し想像してみましょう。ダイエーが納付漏れを指摘された自転車の修理代金のほとんどが、おそらく1万円未満だったのではないでしょうか。もしそうならば、納付漏れを指摘された「修理承り票」に金額が記載してあれば、その多くが非課税文書だったことになります。印紙を貼っていなくても、国税局に納付漏れを指摘されて3300万円もの過怠税を納めることはなかったはずです。

(写真と本文は関係ありません)

 金額を書いたか、書かなかったか――それだけの差で、納める税金が3000万円以上も違ったことになります。しかも、過怠税は法人税の損金や所得税の必要経費には算入されないので、ダイエーにしてみれば本当に痛いミスだったことでしょう。

 法人税などと比べると、印紙税は金額も小さく目立たない税金です。しかし、ちりも積もれば山となるというたとえもあるように、気付かないうちに余計な印紙をたくさん貼っていたり、逆に納付漏れを指摘されて多額な追徴課税を納める羽目に陥ることがないとも限りません。

 甘く見ていると、痛い目に合う……。印紙税は、そんな怖〜い税金なのです。

著者プロフィール:

田辺直樹(たなべ・なおき)

昭和38年生まれ。昭和63年12月、税理士試験合格。大原学園で簿記・税理士受験の専任講師として約25年間、教鞭をとる。平成22年1月に独立し、株式会社ナオ企画を設立。大原学園で培った講師のキャリアを生かし、“分かりやすくて、すぐ役に立つ”税務セミナー講師として活躍している。


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