新型マツダ・デミオが売れた3つの理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2015年01月30日 10時00分 公開
[池田直渡,Business Media 誠]

 新型デミオが売れている。マツダは2014年9月26日に「デミオ」をフルモデルチェンジした。次いで翌10月23日にはディーゼルエンジン搭載車を追加。両モデルが揃った11月の販売では、日本自動車販売協会連合会(自販連)の車名別月間販売台数ランキングでいきなり4位を獲得し、翌12月もその順位をキープした。

マツダ新世代ラインナップのトリを務める新型デミオ。車名別販売台数でも初登場4位を獲得した(出典:マツダ)
2014年11〜12月の月間販売台数ランキング(出典:日本自動車販売協会連合会)

 今回取り上げるデミオは、ヴィッツ(トヨタ)やフィット(ホンダ)のライバルにあたる、Bセグメントモデルの車である(セグメントについて詳しくは記事末のコラムを参照)。このランキングは、ここ数年ほぼハイブリッド車の独壇場で、特にフィット・ハイブリッドがデビューして以降は、アクア、フィット、プリウスが三つ巴の戦いを演じてきた。そのトップ3の直下に2カ月連続してマツダ車が食い込んだことは異例の事態と言っていい。過去を振り返っても、自販連の記録が公開されている2010年以降にマツダ車がベスト5に入ったのは2011年の7月に先代デミオが4位を獲得した一度だけだ。

 マツダはここ数年、主力車種を新世代に切り替える計画を着々と進めてきた。そのキーワードとなるのが「SKYACTIVテクノロジー」だ。2010年に「SKYコンセプト」としてスタートしたSKYACTIVテクノロジーは、省エネと低環境負荷、高い安全性能と走行性能など、クルマに求められる多元的性能を総合的に引き上げることを目指した基盤技術群のこと。

 平たく言えば、場当たり的な部分最適化を脱却し、全体を見通して開発を行うある種の「開発ビジョン」と言っていいだろう。このビジョンにのっとって開発されたエンジン、トランスミッション、シャシー、ボディは、ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」、ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D」、トランスミッションの「SKYACTIV DRIVE」など、それぞれに「SKYACTIV」を冠した名前を与えられている。

 SKYACTIV技術は各車種のモデルチェンジなどに際し、可能な部分から逐次投入されてきたが、SUVの「CX-5」が初めて全要素をSKYACTIV化したのを皮切りに、主要モデル3兄弟であるDセグメントの「アテンザ」、Cセグメントの「アクセラ」の順で世代更新し、Bセグメントのデミオで主要ラインナップの刷新が完成した。コンセプトから5年を経てようやく主力車種のFULL SKYACTIV化が完成したわけだ。

 中でももっとも販売台数が多いデミオは、マツダにとって絶対に失敗が許されないモデルであり、デミオの売れ行きは新世代ラインナップ計画そのものの成否を占う正念場とみられていた。今回そのデミオが予想を上回る成功を遂げたことでマツダは大きな飛躍のチャンスをつかんだと言えるだろう。

 では、デミオはなぜ売れているのか? 筆者が考える「売れている理由」は、(1)Bセグメントマーケットでの内外装デザインの差別化、(2)ディーゼル、(3)ステップダウンに対応したパッケージデザイン、この3つだ。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.