「管理職募集、未経験者歓迎」求人って? 変貌する企業の組織体系サカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/2 ページ)

» 2015年01月26日 12時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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誰が組織にとって必要な人材なのか? その見極めが始まる

 一方、まったく違うアプローチをし始めている企業もあります。

 「優れたパフォーマンスを発揮しているメンバーであっても、周囲との協調性がないという人がいます。その人は少なくとも、従来の管理職という立場に就けるイメージができません。そういう育成の仕方も無意味だと思うのでやるつもりもありません。一方で、そのハイパフォーマーが一人で仕事ができるのかというと、そうではない。周囲の助けが当たり前ですが必要です」

 ある企業の人事担当者はこういって、職場の中での人のつながりを、図で書き、説明し始めました。そして、ある人に注目して、赤で丸く囲います。

 「この人、個人のパフォーマンスは大したことがありません。落第とは言いませんが、まあ、普通です。しかし、この人の周囲の成績はすごく良い。この人が周囲のモチベーションを高めて、周囲のパフォーマンスを高めている可能性がある。いままで大事だと思っていなかった、もしくは、なんとなく肌感覚では理解していたことを、もう少しきちんと見極めなくてはならない時代に来ているのかも、と実感しています」

職場の中の人のつながりに注目する企業が現れ始めている(写真はイメージです)

 さらに現状の組織体系では、周囲を育成できない、つまりは管理職になれないハイパフォーマーが加齢していったときに報いる給与の仕組みもないし、パフォーマンスが低いけれども、組織にとってはとても大切な人に対しても、その重要性を反映する仕組みがないことも、頭の痛い課題だといいます。

 ただし、少なくとも「いまの立場において、与えられた仕事ができる=優秀な人材である=昇進をさせて、管理職として処遇する」という図式はもう成立しなくなります。考えてみれば当たり前のことですが、最近やっと着手した、という企業が徐々に増えてきているようです。

ごく平凡なビジネスパーソンが生き残る術はあるのか?

 働く個人の立場で考えてみると、職場は組織の都合でコロコロと変わる、それによって育成の方針もまったく違ったものになってしまう、結果として、ビジネスパーソンとして必要な資質を獲得する経験したりや教育を受けたりすることなく、ある部分が足りなくなっていたビジネスパーソンになってしまうという怖い話でもあります。とてつもないパフォーマンスを出せる人なら別ですが、多くの人は「どうしたらいいんだ?」という話になりそう。

 打ち手としては、個人として磨ける能力は極限まで磨きこんでおくこと、そして、周囲との関係性を良好に保ち、一人で働いているのではなく、組織の一員として働いていると意識しながら行動をする、というくらいしかありません。でも、これもなかなか難しい。さらにそこには「職場風土」という、耳慣れた言葉が邪魔をするのです。この問題も個人ではどうすることもできないこと、にはなるのですが……続きは次週ということで。

著者プロフィール:サカタカツミ

 クリエイティブディレクター。就活や転職関連のサービスをプロデュースしたり、このような連載をしていたりする関係で、そちら方面のプロフェッショナルと思われがちだが、実は事業そのものやサービス、マーケティング、コミュニケーションの仕組みなどを開発するのが本来の仕事。

 直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」「MakersHub」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』『就職のオキテ』。この連載についても、個人的に書いているブログでサブノート的なエントリーを書く予定。Twitterアカウントは@KatsumiSakata


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