「寝台特急北斗星を残して」と第3セクターの叫び 気持ちは分かるが“筋違い”杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2015年01月23日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

廃止の情勢に対して策はあったか

 青森県、岩手県は本気で寝台特急存続なんて考えていない。でも、現実問題として寝台特急に関連する運賃・線路使用料などは減ってしまう。そこに対策をしてきただろうか。

 青い森鉄道やIGRいわて銀河鉄道が発足したとき、北斗星は2往復だった。それが2008年3月のダイヤ改正で1往復になった。北海道新幹線の工事の影響だった。北斗星からの線路使用料は半分になった。ただし、このときは国の指導によって貨物列車からの線路使用料を増やして穴埋めした。

 時代背景として、それ以前に東京から九州方面の寝台特急は整理されていた。寝台特急の減少傾向、車両の老朽化、JRに寝台車新製の意向無し、北海道新幹線の開業準備などの要素を考えれば、将来の北斗星廃止は予測できた。鉄道会社の経営陣なら当然、含んでおくべき要素だった。その間、青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道は何か手を尽くしただろうか。

 北斗星の定期列車廃止および臨時化は、2012年6月ごろ、JRの労働組合資料を出元とする噂で広まった。2013年11月2日に河北新報が上野〜秋田間の「あけぼの」廃止をスクープすると、報道各社の情報合戦が始まり、同年11月6日には共同通信が2014年度末の北斗星廃止を報じている。同年11月9日にデーリー東北が「北斗星廃止と青い森鉄道への影響」を記事化していた。このとき、青森県、岩手県とも動きが報じられていない。

 2014年5月、JR西日本は大阪〜札幌間の「トワイライトエクスプレス」の廃止を正式発表。翌日、朝日新聞はJR東日本幹部の談話として北斗星とカシオペアの存続困難との見解を紹介している。ここでやっと北海道、青森県、岩手県が動き、2014年6月にJR北海道へ存続を要請した。それから半年が過ぎて、先日、また似たような要請を行った。ちっとも進歩していない。

青い森鉄道は旧東北本線の青森県内区間を継承した第3セクター鉄道 青い森鉄道は旧東北本線の青森県内区間を継承した第3セクター鉄道

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.