そろそろJRグループは“コミケ臨時列車”を検討しよう杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

» 2015年01月16日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

りんかい線とゆりかもめの対応

りんかい線からコミケ当日のお知らせとお願い。キャリーバッグに注意、止まらずに移動してください、埼京線直通を待たないでください、などの項目がある(出典:東京臨海高速鉄道公式サイト) りんかい線からコミケ当日のお知らせとお願い。キャリーバッグに注意、止まらずに移動してください、埼京線直通を待たないでください、などの項目がある(出典:東京臨海高速鉄道公式サイト)

 1日あたり約20万人も集まると、会場アクセスもかなり混雑する。東京ビッグサイトの最寄り駅は東京臨海高速鉄道りんかい線の「国際展示場駅」とゆりかもめの「国際展示場駅正門駅」。コミケの公式サイトには、ほかに都営バスと水上バスが案内されている。公式サイトに「交通渋滞を緩和するためタクシーは遠慮してください」や「IC乗車券推奨」、「IC乗車券は(自動改札をふさがないように)十分チャージを行って」、「(りんかい線はJRではないため)埼京線や山手線からきっぷで乗る場合は、精算用の小銭(例:大崎→国際展示場は330円)を用意してください」という趣旨の案内がある。

 来場者にここまで親切に案内するイベントは珍しい。そこには「世間に迷惑をかけない」という大前提があるようだ。それは会期設定にも現れている。夏はお盆、冬は年末。ビジネスのオフタイムに設定すれば、会場となる展示場は確保しやすく、ビジネスホテルも空室が多い。この時期は臨時列車や飛行機の臨時便も多い時期である。ただし帰省客とコミケ参加者は逆向きだけれど。

 大勢の来場者を迎えるりんかい線とゆりかもめも最大数の増発で対応する。これは単なる商機やかき入れ時という理由ではない。ふくれあがった乗客数を駅やホームに滞留させると危険だからだ。りんかい線は休日ダイヤの早朝と日中の列車を上下合わせて36本増発。さらに「埼京線直通を待たずに目の前の電車に乗ってください」と呼び掛ける。ゆりかもめは始発列車を繰り上げ、早朝は日中並みの4〜8分間隔、日中は通勤時間帯並みの3.5分間隔でフル稼働する。

りんかい線のコミケ臨時ダイヤ。赤色が増発列車(出典:東京臨海高速鉄道公式サイト) りんかい線のコミケ臨時ダイヤ。赤色が増発列車(出典:東京臨海高速鉄道公式サイト)
ゆりかもめのコミケ臨時時刻表。国際展示場正門駅。日中はフル稼働(出典:ゆりかもめ公式サイト) ゆりかもめのコミケ臨時時刻表。国際展示場正門駅。日中はフル稼働(出典:ゆりかもめ公式サイト)

長距離列車に商機あり

 りんかい線とゆりかもめの「臨戦態勢」に比べると、JR東日本は対照的に「普段のまま」を貫く。これもなかなか潔い態度だ。JRは会場直結ではないから参加者の動きも分散されるし、もともと輸送量が大きいからだろう。都内の路線は通勤ラッシュがない時期で、帰省客向けの長距離輸送に注力している。1日約20万人の流動とはいえ、自社最寄り駅から離れたイベントでは揺るがない。これはこれで頼もしい。

 しかし、JR東日本にもう少し商売っ気があるなら、やっぱり「コミケ需要」は見過ごしてはいけない。都内の輸送量は確保できたとしても、コミケは全国から集まる。そこには各地からの臨時列車を成立されるだけの需要がありそうだ。東京からの年末年始の臨時列車は年末に下り列車、年始に上り列車を増やす傾向にあるけれど、年末に開催されるコミケは年末の上り需要を創出する。

ニコニコ超会議号のツアー募集サイト(出典:日本旅行公式サイト) ニコニコ超会議号のツアー募集サイト(出典:日本旅行公式サイト)

 現在でも、関西方面からのコミケ参加者にとって、大垣(名古屋)〜東京間の臨時夜行快速列車「ムーンライトながら」はありがたい存在だ。2014年末はほかに青森〜上野間の臨時寝台特急「あけぼの」が運行された。出雲市〜東京間の寝台特急「サンライズ出雲」は増発されている。きっと遠方からのコミケ参加者も利用したことだろう。

 でも、コミケ向けの臨時列車はもっとあってもいい。かつてはムーンライトながらの臨時便もあったけれど、コミケ期間に限っては復活してもいいと思う。2014年末は北海道新幹線の試運転の影響で、青函トンネルを経由する寝台特急「北斗星」、「カシオペア」、「トワイライトエクスプレス」は走らなかった。つまり車両は余っていたわけで、これをコミケ向けの臨時列車として走らせたら良かった。

 北斗星やカシオペアは東北各地からの利用者がいただろうし、トワイライトエクスプレスの車両は北陸回りで大阪と東京を結ぶ手もあった。JR東海は在来線の客車列車を嫌っているようだけど、北陸回りなら設定可能。このルートは幕張メッセで開催されるイベント「ニコニコ超会議」に向けた大阪発上野行き団体列車「ニコニコ超会議号」で実績がある。

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