クルマも同じだ。一見現実的過ぎて夢がないように見えるデトロイトショーは、限りなく本気で「売るための商品」を訴求する場、大人のビジネスコンベンションだ。そこに登場するクルマは、すでに宣伝プランも販売プランも出来上がっており、早々にマーケットに投入され、会社の売り上げに貢献してくれる「リアルな商品」なのである。
ビジネスの観点で見る限り、絵空事のコンセプトカーを見せられるより、デトロイトショーは遥かに面白い。そもそも北米の自動車ショーは、歴史的に「クルマのお祭り」であったことがない。10年ほど前までは、販売店が本気でクルマを売りに来る展示即売会的な側面さえ持っていたのだ。
しかし世界の自動車大国である米国が、国際格の自動車ショーをひとつも持たないことを憂慮したGM、フォード、クライスラーの意向を汲んで、北米で開催されるロサンゼルスショー、シカゴショー、ニューヨークショーを退けて国際格のショーに位置付けられ、多少ながら華やかなイベントが行われるようになった。こうした歴史を経て、今日のデトロイトショーがある。
デトロイトは地味なショーだ。日本のメディアでも扱いは少ない。しかしわれわれの明日と確実に地続きで存在する未来をデトロイトは見せてくれる。本当の自動車の未来が見えるのは、実はこういう“一見地味なショー”なのである。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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