ネット上で、日本人が“残念”であり続ける4つの壁烏賀陽弘道の時事日想(3/5 ページ)

» 2015年01月08日 08時00分 公開
[烏賀陽弘道,Business Media 誠]

コンテンツ発信力の差

 つまりネットでは、言語の壁に加えて「文化の壁」も根強く残る。特に日本文化のようにその共有範囲が「日本列島」という物理的空間に限定されている文化の場合はなお孤立傾向を強める。イスラム文化の人々が国を越えて「ラマダン(断食月)あけの祝祭」を話題にしていることや、ユダヤ文化の人々が世界で「ハヌカ」(ユダヤ暦キスレブ月の25日から8日間行われるお祭り)「過越しの祭り」(隷属から解放され、エジプトを脱出したことを祝うユダヤ教の休日)や「バルミツバ」(13歳の成人式)を話題にしていることを見ても、「日本文化は日本列島の中でしか共有されない」という特殊ぶりが突出してくる。

 ちなみに、ネット世界では日本のような太陽暦新年の祝祭より、太陰暦新年の祝祭のほうが大きく話題になる。世界の中国人や、中国系移民が太陰暦で新年を祝うからだ。

 もうひとつ困ったことに、日本列島という空間には、日本語という「世界の中では特殊言語」を使って、同じような番組を流すテレビ局が5系列(NHK、フジ、テレビ朝日、TBS、日本テレビ)もある。そして日本語の新聞や雑誌といったマスメディアが全国を満たしている。おまけにそうしたマスメディアは「日本」という領域を一歩出ると、海に落ちるように影響力が消える。この「マスメディアの単一性=多様性のなさ」が、日本人のネット上の発言や思考をますます世界の他の文化集団から孤立させ、特殊なものにしている。分かりやすい例を挙げると、日本のテレビの話題や流行をいくらネットで英語で話しても、それは非日本文化圏の人々にとっては「何のこっちゃわからん話」なのだ。

 反対に、欧米のテレビ番組を考えてほしい。『24時間』や『セックス・アンド・ザ・シティ』といった番組は世界中で話題になった。実際にFacebookでも米国のテレビ番組の話はよく飛び交っている。米国人だけでなく、オーストラリア人、日本人、韓国人、中国人、欧州人など世界中の人々が会話に参加している。これは世界で普遍性のある(もっと正確にいうと世界の市場で貫通力がある)コンテンツをつくる文化圏と、つくれない文化圏の差がネットでも出ている、ということだ。言語、文化の壁に加えて、コンテンツの発信力の差も、ネット世界での障壁あるいは格差として残るということだ。

コンテンツ発信力の差も……

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