アメリカン・エキスプレス新社長が目指す「より広く、深く」とは?個人事業主や中小企業オーナーへ注力(1/3 ページ)

» 2015年01月05日 08時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
アメリカン・エキスプレス・カード

 2014年9月にアメリカン・エキスプレス・インターナショナルの社長に就任した清原正治氏。ゼネラル・エレクトリック・キャピタル・コンシューマー・ファイナンスや、日産自動車のグローバル販売金融担当など、コンシューマ向け金融について豊富な経験を持つ人物だ。

 「より広く、深く」をコンセプトとして事業を展開する、と語る清原氏に、これからのアメリカン・エキスプレスについてインタビューした。

アメリカン・エキスプレスは「生活の一部」になりたい

 以前、アメリカン・エキスプレスの中島好美副社長にインタビューしたとき、印象的だったのが「競合はカード会社ではなく、現金(キャッシュ)」「アメリカン・エキスプレスは生活の一部になりたい」というフレーズだ。その思いはまったく変わらない、と清原社長は話す。

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル社長、清原正治氏

 「(日本の)クレジットカード全体の市場規模は、キャッシュの約4分の1と言われています。私たちの最大のライバルは、他のカード会社さんではなくキャッシュ。まだカードをお使いでない方に『キャッシュよりカードのほうがいいですよ』と、クレジットカードを利用するメリットをお伝えすることが大切だと思っています」

 米国では支払い手段の40%がクレジットカードで現金払いが24%とカードの利用率が高いのに対して、日本ではクレジットカードの取扱高が伸びているとはいえ今も支払い手段は現金が中心であり、現金74%、クレジットカードが17%(2011〜2012年、EuroMonitor調べ)。今日本で注力すべきは、カード決済を増やしていくことだと説明する。

クレジットカードのメリットとは?

 「クレジットカードのメリットはいろいろありますが、特に私たちのカードで買っていただいた場合は、『安心感』や『補償』などが分かりやすいメリットです。(カードで購入した商品の)返品を受け付ける、壊れてしまったときに修理ができるというのは、キャッシュでは得られない安心感ですよね。実際、カードで購入したものの補償というのは、(AMEXの)スタンダードなベネフィットの中ではもっとも利用率が高いです」(清原氏)

 アメリカン・エキスプレスでは、原則として年会費無料のクレジットカードは発行していない。つまり、ユーザーはすべて有料の会費を支払って利用しているということになる。「現在グローバルで1億500万人のAMEXユーザーがいて、そのほぼすべての方から年会費をいただいています。さまざまな種類のカードがありますが、どれも利用率は高いですね。グローバルで見ると、カード会員の年間平均利用額は1万1600ドル。これはVisaの4100ドル、MasterCardの3300ドルより高く、(AMEXのカードを)『持っているけど利用しない』という方は少ないです。海外旅行の時だけじゃなく、日々のお買い物でも、少額でも、毎日(AMEX)カードを利用していただければうれしいです。アメリカン・エキスプレスは『生活の一部』になりたい」

 競合を見ると「年会費無料、買い物のたびにポイントがついてお得」というメリットを押し出して会員を獲得しているカード会社が目立つ。それに対し、年会費が有料のAMEXは不利なのではないか? と尋ねると、「私たちの強みはポイントではありません※。航空会社と提携してマイレージがたまる……というセグメントのカードもありますが、それ以外の部分でポイントで勝負するつもりはありません。たとえば先ほどお話しした商品の補償の部分。あるいは海外に行って何かトラブルがあったときにサポートデスクに頼れるとか、レストラン予約をするときにコンシェルジュデスクを利用するとか……。海外で本当に困ったときに頼れる、いろいろな時に演出できる力といった部分を評価していただいていると思います」

※アメリカン・エキスプレス・カードでは、カード利用代金に応じたポイントをためることができる(100円=1ポイント)。
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.