海外進出を検討している中小企業が注意すべきポイントとは?日本の常識は通じない(1/2 ページ)

» 2014年12月29日 06時40分 公開
[ふじいりょう,Business Media 誠]
TKCは海外進出を検討している中小企業の財務担当者を対象にセミナーを開催した

 海外進出を検討している中小企業にとって、注意すべきポイントとは……?

 12月15日、会計や税務のソフトウェア、ITサービスなどを開発・発売しているTKC(参照リンク)が、海外進出を検討している中小企業の財務担当者を対象としたセミナーを開催した。セミナーでは、「CFO(最高財務責任者)のための海外子会社管理のポイント」「実務担当者のためのグループ会社管理の最新実務」と題した8つのセッションが行われた。

 本セミナーには監査法人・公認会計士・企業の海外進出を支援するコンサルタントらが登壇した。2015年5月に改正会社法が施行されると、監査等委員会設置会社制度や子会社の役員等の責任を追及する多重代表訴訟が導入され、企業にはこれまで以上に、グループ企業統治や内部統制システムの強化が求められるようになる。海外子会社、特に中国・東南アジアにおけるビジネスリスクや失敗事例に関するセッションには数百人もの来場者を集め、関心の高さがうかがえた。

アジアに進出した中小企業の4割は利益を計上できていない

グローバル・ジャパン・コンサルティング代表取締役 熊本浩明氏

 「失敗事例から学ぶ海外子会社管理の3つのポイント」に登壇したグローバル・ジャパン・コンサルティング代表取締役で公認会計士の熊本浩明氏は、世界GDPにおける日本の割合が2010年の5.8%から2050年には1.9%まで低下するというゴールドマン・サックスの調査を示し、日本の少子高齢化が進むことにより中小企業でも海外に子会社や関連会社を保有する直接投資が増えていると指摘した。

 しかし、「海外に積極的に出る攻めの姿勢の企業も増えている一方、守りの部分がおろそかになって落とし穴にはまりこんでしまい、多くの損失を抱えたり泣く泣く撤退せざるをえない企業も多数ある」とも話す。アジア・オセアニアに進出した大企業の3割、中小企業の4割強が利益を計上できていないという厳しい現実を踏まえ、「海外では制度も税制も時差も文化も違うため、実態を把握するのが難しくなる。財務的なサポートや戦略を修正していく必要がある」と課題への早期対応がカギになると強調した。

海外子会社管理の失敗事例

 熊本氏が挙げる海外子会社管理の3つのポイントとは、「本社での意思決定の問題」「海外子会社の実務運用面の問題」「本社と海外拠点とのコミュニケーションの問題」である。

海外子会社管理の3つの課題とアプローチ

 技術系・営業系がトップだと、税務審査の際に現地監査法人にアウトソーシングするケースが多く、実態の把握やモニタリングがなされない場合も少なくないという。また、国によって決算期や勘定科目が違うことによりグループ全体での損益が把握できなくなって連結決算に不備が出るケースや、給与にかかる個人所得税の扱いが国によって違うことを把握せずに税務調査で指摘される事例もあり、「アジアは成長が早いが、国によってはインフラが整っていなかったり、法制度が複雑。思わぬところから税務リスクが出てくる。グループ全体の整合性を考えながら、情報を入手して意思決定が必要」(熊本氏)と、海外子会社で収益を上げる難しさを述べた。

 一方で、経営理念や管理ルール、運用をグループで共有を図り本社の求心力を高めることで管理コストが下がると指摘。「欧米や韓国の企業は、子会社の情報が適切に出ている。戦うコンベンターになるには、グループ一体になることが求められる。なめられずに一定の緊張感を持ってもらうためには、モニタリングの仕組みが必要」と、戦略と実態把握の重要性を繰り返し述べた。

グループの経営理念・組織・仕組みづくりが重要
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