父: 学校の授業で、「仕事」とか「働くこと」について学ぶ機会ってある?
娘: 小学5年生のとき、社会科見学で群馬の日産工場に行ったことはあるよ。
父: 中学校では?
娘: うーん、あんまりないかなあ。
父: 今年の夏、学校のカリキュラムの一環として職業体験しなかったっけ? 小学校に何日か行って、担任の先生をサポートしたり、小学生と遊んだりしただろ。
娘: あー、あれね……。働いたって実感はなかったけどね。
父: たった2日間かそこらだもんね。お客さん扱いされてオシマイだろうな。
娘: うん(笑)。授業で仕事を学ぶってこと、ほとんどないんだよ。
父: 「仕事」と聞いて何を思い浮かべる? どんなイメージが湧く?
娘: (しかめっ面をして)面倒くさい……疲れる……だけど、お金はもらえる……のがお仕事なんじゃないかと。
父: 働いた経験がないのに、ずいぶん仕事に対してマイナスイメージを持っているじゃないか。
娘: 大人は、生きるために仕方なく働いているんじゃないのかな? そういう気持ちはどこかにある。
父: そう思うってことは、サオリの周囲の大人が、そんな様子で働いているってことか?
娘: うん。
父: 誰よ?
娘: 職業体験で行った小学校の担任の先生とか。生徒に怒ってばっかりで、全然笑顔を見せずに、いつもムスッてしてたんだ。よっぽど仕事が面白くないのかな〜って思ったよ。
父: ほうほう、他には?
娘: いま通っている中学校でも、楽しそうに働いている先生はほとんどいないように見える。あたしは1年生のとき、常に一番前の席に座っていたんだけど、生徒が指示通りに勉強しないと舌打ちして、それが聞こえることもあったの。「先生、辛そうだな」って思った。
父: 学校以外の大人は?
娘: 登校するとき、いつも交差点にある交番の前を通るの。そこで交通整理とか見回りをしているおまわりさんがいるんだけど、信号無視する自転車が目の前を通っても知らんぷりしてる。他の同僚みたいな人とおしゃべりしていることもあって、何やってんだって思う。
父: そういう大人を日ごろ見ているから、働くことが面倒でイヤな作業だって思えてしまう、と?
娘: そうだね。
父: ところで、サオリはお父さんが何の仕事をしているか、知っているよな?
娘: (焦りながら)えっと……いろいろしているっぽいからよく分かんないけど、作家……だよね?
父: おいおい! 作家ではないぞ。もちろん書く仕事もするが、本業ではないよ。
娘: え、そうなんだ。だって、家でいっつもパソコンを叩いているから、てっきりそうなのかと……。
父: 「パソコン=作家」って決めつけるなよ(笑)。11月にやった「Six Apart ファミリーデー※」ってイベント(参照リンク)で会社訪問しただろう? そのとき業務内容の説明を、社長直々に受けたじゃないか。
娘: む、難しくって、全部理解できなかったよ(汗)。
父: 念のため言っておくと、シックス・アパートは作家の集団ではないし、新聞記者の集まりでもない。もちろん、出版社でもメディア企業でもないぞ。
娘: そうなんだ。初めて知ったよ……。。だってお父さん、家では仕事のこと話さないし、仕事をするときは無言でキーボードを叩いているでしょ。改まって説明してくれたこともなかったじゃない。
父: うーむ、たしかにサオリの言うとおりだ。お父さんの仕事は後で説明するとして、シックス・アパートで社員の人たちと交流したろ。あの人たちはどうだ? 仕事を楽しんでいそうか、イヤイヤやっていそうか。
娘: きっと自分で望んであの場所にいる人たちだと思う。イヤイヤでたどり着く場所にしては、素敵すぎるオフィスだったし(笑)。実際に働いている姿は見ていないから想像だけど、たぶん間違いないね。
父: やっている仕事は1ミリも分からなくても、きっと楽しく働いているだろうと?
娘: そんな気がするよ。
父: そこの一員であるお父さんは?
娘: そりゃあ、やりたい仕事ができているんじゃない? 家でも辛そうな表情とかしていないし。
父: お前、ついさっき「仕事は面倒で辛いモノ」って言ってなかったっけ。矛盾してない?
娘: あれ? 本当だ。つまり、その……例外もあるってことじゃないかな。
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