しかしながら、ここに来て日本におけるMMA存続の新しい形が見えてきた。それがIGFである。さまざまな分野で分裂や合体が繰り返され、ラディカルな要素が求められる過渡期の今だからこそ、INOKI BOM-BA-YEのようなMMAとプロレスの融合イベントが多くのファンから支持を受けている要因なのかもしれない。
いわゆる“格闘技バブル”が日本で崩壊して、MMAマッチを組む有力な団体が次々に解散へ追い込まれ、戦場をなくした多くの一流ファイターたちが、このIGFにザッとなだれ込んだ。
言わずと知れた、元人気プロレスラーで現参議院議員でもあるアントニオ猪木氏が創立し、2006年6月に旗揚げしたIGFは「プロレスラーだけでなくMMAファイターにも戦いの場を提供する」という非常に柔軟な姿勢を持っており、国内で試合をしたいという希望を持つ総合格闘家にとってはまさに「救いの神」でもあった。
とはいえ、いくらMMAの試合が組まれているといっても、昔ながらのコアなファンの中にはプロレス団体でもあるIGFに未だ違和感を覚える人もいると聞く。これに対しては元PRIDEファイターで、現在はIGFを国内の主戦場にする“バカサバイバー”こと青木真也がメディアを通じて、こう反論している。
「何ででしょうね……。今の状況を考えたらプロレス団体が格闘技をやってくれることに感謝でしょう。今の日本の格闘技がどうなっているのか分かっているのかって。もしそういうことを言う人がいるんだったら僕は残念だし、腹が立ちます。IGFがなかったら、大みそかに格闘技のイベントは見られないし、僕のお年玉もない。だから僕はIGFが救ってくれたことをありがたいと思うし、もしIGFやプロレス団体が格闘技に協力してくれなかったら、もう誰も格闘技には手を差し伸べてくれないかもしれない」
見る側とやる側は違う――。これは総合格闘技界、またはプロレス界でもファンとファイターのそれぞれの心理を差別化する際に、昔から用いられる言葉である。大衆の支持を得られないのに理想論ばかり追い求めていては、MMAファイターたちは生活に困窮する。そういう意味では彼らにとって、IGFは理想郷と言えるのかもしれない。
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