コラム
» 2014年12月15日 06時00分 UPDATE

検診のススメ:医師が健診をすすめるのは「あなたの命を救いたいから」 (1/3)

「どこも悪くないのに健診なんか受ける気がしない」と思う人は多いでしょう。しかし、何の症状もないからといって健康だとは限りません。病気が治るか治らないかは、早期発見が重要なのです。

[高山哲朗,いしゃまち]
いしゃまち

著者プロフィール:高山哲朗

医学博士。慶應義塾大学医学部卒業、内科医として臨床を行うと共に難病の炎症性腸疾患研究に従事。現在は終末期医療への強い関心から、わたクリニック副院長として勤務。人工知能を用いた予測や分類の臨床研究が国内外で評価されている。東海大学医学部客員准教授に招聘されると共に、予測医学研究所所長として大学、企業と実臨床に応用可能な医療予測ツール開発を行っている。


 「何の症状もないのに健診なんか受ける気がしない」
 「病気が見つかったら怖い」
 「時間とお金がもったいない」

 健康診断やがん検診を受けるか迷う、または受ける気がないという人からよく聞く意見です。時間や手間、お金を使って受けるのは確かに大変です。会社からの義務として仕方なしに受けている人もいるでしょう。

 現在、日本のがん検診の受診率は20〜30%ほどです。欧米の検診受診率が70%以上であることからすると、実はとても少ないのです。日本ではがん検診を50%の受診率にしようと、毎年キャンペーンを行っています。

 健診やがん検診を受ける意味はご存じの通り、「隠れた病気をみつける」ことです。

 自治体や国が健診やがん検診の受診を声高に勧めるのは、疾患による経済的喪失など、社会との関連の意味合いが強いでしょう。しかし、医師が健診やがん検診を勧めるときは、少し意味は異なります。

 今回は内科医、消化器内科医としての経験をもとに、「健康診断を受けてほしい」その理由をお伝えします。

「今の医学ではほとんどの病気は治らない」

 これが健康診断やがん検診を受けてほしい理由です。より正確に言えば、進行した病気はほとんど治せないということです。

 「治る病気もあるだろう」という声もあるでしょう。もちろん、治る病気もありますが、現在の医学においてそれは「早い段階の病気」に限られているのです。健康診断やがん検診を受けてほしい理由を言いかえると、それは

 「治る段階で疾患をみつけて治したい」

 これに尽きます。

 治る段階の病気のほとんどは「症状がありません」。胃がんを例に説明しましょう。

 胃がんは日本人にとっては国民病とも言えます。先進国の中で胃がんがこれほど多い国はありません。

 みなさんが胃がんと聞いてイメージするのは、「胃の痛み」や「血を吐く」などではないでしょうか。これらは、いずれもかなり進行した状態での症状です。その状態の多くは、転移などがあり根治療法が難しい状況です。

 これに対し、早期胃がんは内視鏡治療で治ります。開腹せずに根治が望めます。病院勤務時代に経験した事例を示します。

63歳男性の事例

 2カ月前からなんとなく体調が悪い。胃のあたりが重い感じがする。
 食事は普通にしているのに、以前と比べ10kgほど体重が減った。
 60歳で定年を迎えるまでは会社で健診を受けており胃カメラも毎年行っていたが、定年後は行っていない。便に血は混じっていない。

 この話を聞いて消化器内科医は「胃がんだな」と思っています。血液検査、胃カメラ、CTの検査が指示されます。多くの病院では検査まで通常1カ月程度待つと思いますが、「すぐにやりましょう」と言われます。

 検査を終えて1週間後に外来を受診すると、胃がん、多発肝転移、リンパ節転移と診断され、抗がん剤の治療を勧められます。こういう人を多く診てきました。

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