なぜLINEの「既読スルー」にイラッとするのか コンセンサスなき紛争烏賀陽弘道の時事日想(3/5 ページ)

» 2014年12月04日 08時00分 公開
[烏賀陽弘道,Business Media 誠]

「コンセンサスなき紛争」が勃発

 例えば、Twitterのリツイート(RT)。他から回ってきたツイートを、自分の読者にも回覧することだ。このRTを「回ってきたツイートの内容に賛成しているからRTしたのだ」と一部のユーザーは理解し始めた。が、私はそんなふうに思ったことがない。全然賛成できない、まったくバカバカしい内容や誤認のツイートを「こんなひどい話があるんだけど、見てほしい」という意味でRTすることもよくあった。「RT=賛成だと思っている」派が私に送ってきたツイートやメッセージを見てびっくりした。

 「PのツイートをRTしているということは、お前はPに賛同しているのだ」と決めつけているのだ。ひどいのになると「Pの一派」「派閥」「信者」「仲間」とか、会ったこともないどころか、正反対の意見の持ち主と一緒くたにされている。

 福島第一原発事故が起きてからは、何でも「原発推進」か「原発反対」かのどちらかでしか見ない乱暴な色分けがひどく、どちらのツイートをRTしても反対側から誤解の石が飛んでくる(私は原発否定派でも賛成派でもない)。最初は丁寧に「違いますよ」と返していたのだが、そういう連中が次から次へと出てくるので、あきらめた。そして「Twitterでは、RTが賛意を表すのかどうかコンセンサスがない」という前提で動くことにした。

 こうした「了解事項の不在」に早々と手を打ったのは、言動に責任を取るのが嫌いな全国紙である。例えば『朝日新聞』の記者の個人Twitterには、プロフィールに「RTは賛意を表すとは限りません」と「免責事項」がうたってある。

 何がしかの形で合意ができても、それが法律のように全体に行き渡ることはないだろう。また、Twitterに新しいユーザーが流れこむ限り、そのユーザーはまた学習しなくてはいけない。その間も、また別のグループが別の了解事項を勝手に作る。そうこうするうちに、いつまで経っても全体を貫く了解や合意はできない。さらに厄介なのは、SNSは次から次へと新しいサービスが登場するので、そのたびにまた新しい「コンセンサスなき紛争」が勃発することだ。

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