2年半の摩天楼生活で、イチローがヤンキースの面々に見せた“流儀”赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2014年12月04日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

イチはウォリアー

 象徴的だったのは、今季限りで現役を引退した「ヤンキースのプリンス」ことデレク・ジーター内野手だ。彼はイチローについて「スペシャルだった」と評し、こう赤裸々に述べている。

 「イチ(イチロー)はプロ意識がとても高い。特に試合に臨む前、クラブハウスで気持ちを高ぶらせていく姿は絶対に誰もマネができないだろう。彼は他の誰よりも球場に早くやってきて、器具を使いながらのストレッチなどで入念に体の手入れを行う。それが終わると自分のロッカーの前に腰を掛けながら20〜30分間、目をつぶって瞑想(めいそう)にふけるんだ。

 そうしたルーチンワークが終わると、イチには完全にスイッチが入る。そこからは試合が終わるまで、もう誰も彼の中に入り込むことはできない。鬼のような形相となり、そこにはまるで『NO ENTER(入るな)』というメッセージが書き込まれているようなんだ。イチはウォリアー(戦士)さ。いつもは愉快なヤツでジェントルマンなんだけれど、こと試合前になると近寄り難い別人に変貌するんだよ。

 今季のイチは決して出番に恵まれていたわけではなかったはずだが、あの試合に対する集中力だけは常に変わることはなかった。スターティングメンバーに名を連ねていない試合は自分にいつ出番が来るか分からないから、モチベーションの維持がとても難しい。それでも彼はいつも変わらないんだからね。まったく持って、スゴい人間だと思う」

 繰り返すが、これはあのジーターが口にしたイチロー評である。滅多なことでは他人を誉めない「崇高なプリンス」からここまで激賞される人物というのもレアケースと言っていい。それだけイチローがヤンキースの中で「特別な存在だった」と認められている何よりの証拠だろう。

イチローはヤンキースの中で「特別な存在だった」

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