「35歳限界説」は本当か? バリューチェーン・イノベーターという成功事例退職者の数が3分の1に(2/4 ページ)

» 2014年12月04日 03時00分 公開
[ふじいりょう,Business Media 誠]

「35歳で限界」ということはない

――エンジニアのキャリア形成ということですが、スキルに関してはOJTで学べる部分が大きいと思います。その上で研修が必要になるのはどういったことなのでしょうか。

馬場: 未経験のエンジニアであれば、まず基礎的な技術研修を受けた後に、お客様先で経験を積む必要があります。逆にいえば、どこに行ってもそれなりの経験が積めるので、若手のうちは派遣先はこちらで決めます。ですが、仕事的には低いレイヤーになるので、やはりお客様先の環境で学べる環境にない場合には、社内に帰って研修する必要が出てくるので、研修制度を提供するようにしています。また、IT業界は資格の価値が高いので、奨励金や資格手当を手厚く出しています。

――よくエンジニアの35歳限界説ということが言われます。経験を積む上で、どのようなポイントがあるのでしょうか。

馬場: 「若いころが華」というのは低いレイヤーの仕事の場合です。例えば障害対応などは、若い人の方がアグレッシブでいられるので向いてはいますが、そこにキャリア10年の人がいても給料を上げづらい。だから、我々としてはエンジニアを少しずつクリエイティブなところに引き上げて、成長させていく必要があるんです。

 IT業界でよく言われる「35歳限界説」というのは、極論すぎます。40歳以上になっても、プロジェクトマネージャーやアーキテクト(設計)ができるレベルになれば、より活躍できるようになります。逆にいえば、国家プロジェクトで多くのスタッフを率いるような仕事は20代ではできない。経験があればこそできる仕事があるわけで、そのレベルに達するようにするのが我々の仕事です。だから、ローテーションで戻す時にはエンジニアが嫌がっても戻します。もちろん説得はしますけど。

退職者が3分の1に、社員数は2倍以上に

――そこまでエンジニアの成長を重視すると、会社としてどのようなメリットがあるのでしょう?

馬場: まず、エンジニアが成長していくことで、働きがいが出てきて、かつ給料もより高くなるので、退職率が下がっていきました。会社としては、彼らの価値が上がっていくので、お客様からいただく単価が上がり、良い相乗効果が生まれています。

――提案されたことを実行して、目に見えた変化があったのは?

馬場: 大きく変わりだしたのは、2005〜6年くらいからですね。退職率が3分の1になりました。それまで3〜4年は社員数が1000人以上になかなか増えなかったのですが、その後は入社する分だけ人が増えていって、現在では約2500人ほどになっています。

バリューチェーン・イノベーターとは

――「バリューチェーン・イノベーター」の定義について、改めてお伺いします。耳慣れない言葉ですが、発案されたきっかけを教えて下さい。

馬場: ひとことでいうならば「お客様先を革新する」ということになるんでしょうか。私が本社に戻ってきて間もなく、社内から16名のメンバーが選抜されて、VSNにとって他社にない価値は何か、掲げるべき旗は何か、を考えるプロジェクトというのがあり、8カ月間議論をしました。そして我々の場合は、技術力が飛び抜けているのではなく、お客様先の問題を見つけて解決するための提案や調整ができることだ、ということになり、体系化していくことになったのです。

単に技術力を提供するだけでなく、派遣先企業のバリューチェーンを最適化する、という意味(クリックするとイラスト全体を表示。提供:VSN)

――「提案」ということだと、「コンサルティング」が近いようにも思えます。でも、バリューチェーン・イノベーターはコンサルとは違いますよね。違いはどこになるのでしょう?

馬場: コンサルタントはお客様先に提案をしますが、我々の場合は提案をして、さらにそのプランの実行までやります。そこに大きな価値がある。お客様をどんどん変化させられる存在なんだと考えています。我々は営業でお客様先の経営側とも現場ともつながっているので、双方に改善のための提案できるのが強みとなっています。

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