進むクラウド化、デジタル化―最新会計ソフト活用で業務効率アップ

青色申告と白色申告、どちらで確定申告すべきなの?今さら聞けない確定申告

» 2014年12月01日 08時00分 公開
[Business Media 誠]

本記事は参考となる情報提供のみを目的としたものです。実際の申告などにつきましては読者の判断と自己責任でお願いいたします。


 12月に入ると「今年も終わるなあ」という気持ちになってきます。サラリーマン(給与所得者)ならば、冬のボーナスを見込んで年末年始の休暇に旅行の予定を立てるなど、年の瀬を前向きに迎える人も多いことでしょう。

 でも、個人事業主やフリーランスにとってはちょっと違うかも。12月31日の決算日に向けて通常業務をこなしながら、経費を増やしたり、売掛金や買掛金の処理を行ったりと多忙かつ煩雑なシーズンです。「確定申告」のことが頭の片隅にちらつき始めるのもこの時期でしょう。

 確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の売り上げから収めるべき所得税額を計算し、税務署に確定申告書などを提出するまでの一連の手続き。所得税だけでなく住民税や国民健康保険料などにも影響する避けては通れない作業です。ちなみに、平成26年(2014)分の申告期間は、2015年2月16日から3月16日までとなっています。

 ところで、同じ確定申告でも「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。その違い、分かりますか? 「よく分からないので簡単なほう(白色申告)でいいや」と思っている人はちょっと待ってください。平成26年(2014年)分から重大なルール変更が行われているので青色申告に切り替えたほうがお得になるかもしれません。

青色申告より白色申告のほうが簡単そうな理由

 個人事業主やフリーランスが行う確定申告では、「確定申告書B」の第一表と第二表、添付書類台紙を税務署に提出しますが、これらに加えて青色申告では「青色申告決算書」を、白色申告では「収支内訳書」を作成します。

 青色申告決算書(両面2枚、計4ページ)の中身は、1年間の収入と経費の一覧をまとめた損益計算書と、期首(1月1日)と期末(12月31日)の資産と負債の一覧をまとめた貸借対照表のセットです。一方で、収支内訳書は損益計算書のみとなっています。

 さて、これらの書類を完成させるには、日々の取引を帳簿に記入(記帳)し、請求書や領収書などを一定期間保存しておくことが必要です。

 白色申告では「単式簿記」という家計簿やお小遣い帳のような帳簿でOK。しかも平成25年(2013年)までは、記帳対象者は「前々年分あるいは前年分の事業所得等の金額の合計額が300万円を超えた人」でした(所得とは、収入合計から必要経費を引いたものです)。

 しかし、平成26年(2014年)から白色申告をするすべての人に記帳と帳簿の保存が義務付けられています。これまで「ざっくり、売り上げはこのくらい、経費はこんなもの」で申告していた人は注意が必要です。

 一方で、青色申告では会計知識が必要な「複式簿記」。このため「青色申告は、白色申告より難しい」というイメージがありました。ところが、最近話題のクラウド会計ソフトをはじめとする確定申告用ソフトを使えば、帳簿付けの難しさはグッと下がります。各社とも入力補助機能に磨きをかけていて、複式簿記であっても“会計知識不要”をうたっているものもあるからです。

青色申告は“難しい”からこそ、さまざまな特典付き

 青色申告と白色申告の大きな違いは、むしろ税制優遇の有無かもしれません。所得税額は収入から必要経費や所得控除を引いた金額に税率をかけて求めます。つまり、経費や控除をたくさん積み上げたほうが税額を低くできるということ。この点で青色申告をすることに大きなメリットがあります。

 まず、「青色申告特別控除」が受けられること。控除額は複式簿記で記帳していると65万円、単式簿記なら10万円です。

 次に、「純損失の繰越控除」が受けられること。赤字になると所得税は0円になりますが、青色申告者は翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越せます。これは翌年、黒字に回復したとしても所得から赤字分を差し引ける救済制度。前年の赤字のほうが翌年の黒字よりも大きければ所得税は2年目も0円となり、残った赤字額は翌々年に繰り越し可能です。

 さらに、固定資産の処理にも優遇があります。一般的に購入価格が10万円を超えるPCやデジタルカメラなどは、その全額をその年の必要経費にできず、決められた年数で割って処理(減価償却)しなければなりません。しかし、青色申告であれば30万円未満の固定資産を全額、その年の経費に計上できます(年間300万円まで)。

 最後に、家族を“従業員”に登録して支払った給与を経費にすることも可能です。青色申告の場合は「青色事業専従者」への支払いの全額を経費にできますが、労働の対価として適切な金額でないと認められません。また、経費の水増しにならないように「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておかなければなりません。

 なお、白色申告の場合でも「事業専従者」を設定できますが、必要経費として認められるのは給与の一部(配偶者なら86万円、配偶者以外なら1人当たり50万円まで)だけという制限があります。

青色申告をするためには事前に届け出が必要

所得税の青色申告承認申請書 所得税の青色申告承認申請書

  白色申告者の記帳義務化により、国税庁もメリットの多さを挙げて青色申告を勧めてきています(参照リンク)。もっともその本音は、青色申告のほうが明朗会計になって税金をとりっぱぐれずに済むからでしょう。

 しかし、青色申告事業者になるためには期日までに税務署に対して「所得税の青色申告承認申請書(参照リンク)」を出さなければなりません(申請は1回のみ)。2015年3月16日までに行う平成26年分の確定申告の場合、2014年3月17日が締め切りでした。ただし、2014年1月16日以降に開業した場合は、開業日から2カ月以内が申請期間です。

 平成26年分は白色申告をするとして、27年分からは青色申告に切り替えたいという人は、2015年3月16日までに上記の申請を出しておきましょう。書類1枚に必要事項を記入してハンコを押すだけの簡単な届け出です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.