「妖怪ウォッチ」クロスメディア戦略の功と罪ヒットの裏側ニャン!(3/3 ページ)

» 2014年11月27日 06時00分 公開
[深澤祐援,Credo]
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レベルファイブが抱えるジレンマ

 このように子供をターゲットとしてクロスメディア戦略を絡めながらゲームソフトを作ってきたレベルファイブですが、そこにはターゲットユーザーを子供、そしてソーシャライザーに注力しているが故の、構造上に抱える課題があります。

 それは子供向けにソフトを作っているためにストーリーに奥深さを持たせられず、シリーズ展開してもマンネリ化してしまうというリスクです。一方で、レベルファイブはマンネリ化を防ぐために新しいIPを作り続けなくてはならないというジレンマに囚われているとも考えられます。

 現在も放映されている「妖怪ウォッチ」のアニメは基本的に一話完結であり、手軽に楽しむことができますが、逆に言えば一話ずつが独立しているため世界観に広がりを持たせることが難しいと考えられます。つまり、ゲームでもアニメでも徹底した子供向けのターゲッティングがなされているということです。

 このことは、将来的に少子高齢化が進む現在の日本で展開するにはあまりにも将来リスクが高い戦略です。つまり、子供をターゲットにすることは成長規模の限界があることを承知の上での戦略とも言えるのです。

ポケモンとの対比

 「妖怪ウォッチの躍進と共にポケモンの地位が危ぶまれる」という声もありますが、プレイヤータイプの分類上、そしてユーザーの年齢層を考えたとき、この2つは交わらないのではないかと思います。

 ポケモンは大部分の低年齢層に対しては前述した妖怪ウォッチと同じようなゲーム要素構成となっており、アニメや漫画、映画も子供向けのストーリーになっています。クロスメディア戦略など共通するところも多いのは確かです。

 しかし、ゲームソフトという点で考えた場合、ポケモンが今日まで優位を保ってきたのは、技構成、隠しパラメータを駆使したバトルシステムの奥深さに起因しているのではないかとも考えられます。

 初代の赤、緑バージョンのころからポケモンシリーズには努力値、個体値、種族値という隠しパラメータが存在していました。この隠し要素は低年齢層というよりも、奥深い駆け引きを求める中高生以上のユーザーを獲得する要因でした。

 どういう対戦相手を想定しどこまで調整するか、6体のポケモンそれぞれにどんな役割を持たせて数ある技の中からどの4つを選ぶか――、こうした心理戦がポケモンバトルでは繰り広げられるのです。これは妖怪ウォッチが持つソーシャライザー志向とは全く異なる一面であります。

 つまり、ポケモンは一見すると妖怪ウォッチと同じターゲット層を意識しているようで、また別の顔としてそういう駆け引きの要素を十二分に持つキラータイプのユーザーをターゲットとしたゲームであるとも言えるのです。

 大学生以上のユーザーも奥深く遊ぶことが出来るゲームとして成立しており、長い歴史の中で固定ユーザーを抱えているという点で、ポケモンは市場規模の縮小に対してそれほどリスクを感じる必要はないのではないでしょうか。

 妖怪ウォッチを抱えるレベルファイブが、今後どのようなユーザー、プレイヤータイプに対して展開していくのか、注目です。

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