借金には2つのパターンがある――悪い借金をする人がハマる落とし穴新連載・お金もセンス(5/5 ページ)

» 2014年11月27日 08時15分 公開
[森永賢治,Business Media 誠]
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「借金」におけるセンス

 これから描くA氏は、複数の人から抽出したステレオタイプであることをご了承いただきたい。

 A氏のキャッシング利用のきっかけは、ちょっとしたケガの治療費としてだった。借入金額も数万円というレベル。しかし、元来ギャンブル好きな彼は、負けが込んできた時に折角作ったのだからとカードローンを使うようになる。それから、あっという間に借金が増え、利子の返済に追われる日々が続く。そして、そのうちに離婚。今は独り暮らし。よくドラマで見るような光景だが、その時の心理状態についてのコメントが非常に興味深かった。

(1)恥ずかしいから、プライドがあるから“見栄を張る”

 人に知られたくないから妻にも当然嘘をついていた。また、お金がないとか借金があるとか思われたくないから気前よく人におごったり、大きな買い物をしたりした。

(2)借りれるお金は「自分のお金」

 いつのまにか、借金も自分のお金として勘定した生活習慣になってくる。借りれるうちは借りないと損という気持ちで、そのうち借金を収入として勘違いし働くのをバカらしいと思うようになる。

(3)ストレスがたまり冷静な判断を失う

 常に借金のことばかり考えているのでうつ状態で自分にも自信が持てなくなる。すべてにやる気を失い、問題を先送りにしようとする。とにかくすべてのプライオリティは次回の返済。同時に、一発逆転を狙って投資やギャンブルに向かうが、さらに借金を抱え込むことになる。

 上記の3つは一例だが、お金との付き合いのバランスを失うと、さまざまな心理状況の中で負のスパイラルが起こる。当事者でなければ、なかなか理解しがたい心理かもしれないが、これは誰にも起こりうる負の連鎖なのである。「貧すれば鈍する」……まさに、平時であればありえないよう思考と感情で正常な判断ができなくなるのだ。

 「借金」におけるセンスとは、常に、自分がどの状況にいるか判断し、ネガティブなスパイラルに陥らないよう気をつけるバランス感覚である。前向きな状況での「借金」は、むしろ人を成長させ、モチベーションを高めるエンジンでもあるのだ。

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