超高齢化社会に向けて、あなたができることサカタカツミ「新しい会社のオキテ」(1/3 ページ)

» 2014年11月25日 10時40分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

 解散。と唐突に書きましたが、みなさん、年末は選挙です。文字通り“師走”の忙しさになりそうですが、いまひとつ「なにを基準に投票をすればいいのか」分からない選挙になる予感もします。これから各党の公約が出揃い、争点が明らかになるでしょうが、いずれにせよ避けて通れないのが、この国の「超高齢化社会」化していくことへの対応でしょう。

 近未来予測などの仕事もしている関係で、私はさまざまな研究機関などが発表しているデータや、ディスカッションの元となるオピニオンペーパーに目を通す機会も多いのですが、最近、とても興味深いものと出会いました。公益財団法人総合研究開発機構が作成した「75歳まで納税者になれる社会へ」(参照リンク)がそれです。タイトルを見ると「物は言いようだ!」と思わず言いたくなりますが、提議はなかなか刺激的です。

 詳細はオピニオンペーパー(参照リンク、PDF)を見ていただくとして、要は以前と比較して、日本人は健康になったし、体力年齢も15年前と比較して5歳以上も若返った。だからまだまだ働けるが問題も多いので整備しなければならないという話です。解散が宣言された後で「バンザイ!」と叫んでいた議員の皆さんの顔ぶれを見ていても、あまり違和感がないと思った次第。

文部科学省が毎年実施している「体力・運動能力調査」合計点の年次推移。高齢者の体力は、近年、増加傾向にある。2012年度の70〜74歳の得点は、1998年度の65〜69歳の得点を男女とも上回った。他の年齢階層でも同様の体力上昇傾向を示しており、この15年間で5歳程度若返っている(出典:公益財団法人総合研究開発機構)

 この連載でもときどき書いている通り、今後労働力が不足するだろうことを予測し、それに対応するために、シニア世代を活用する仕組みを急いで用意しなければ……という動きが企業側でも出ています。

 しかし実際には、そう簡単には対応できそうにありません。下のグラフが示すように、多くの人ができるだけ長く、働ける限り働きたいと思っている状態を、誰が受け入れるのか。少しだけ問題提起してみたいと思います。

60歳以降の収入を伴う就労の意向と就労希望年齢(出典:内閣府)

歳だけをとっている、という人たちが量産されている

 2つ目のデータは、リクルートワークス研究所が提示しているオピニオンペーパー「次世代シニア問題」(参照リンク、PDF)から引用したものです。このペーパーも、とても興味深いデータと記述がたくさん掲載されているので、興味があるかたは、ぜひリンク先をじっくり読んでみてください。ここでも、高齢化社会に対応する組織を考える上で示唆に富んだデータが掲載されています。

年齢階層別 役職者・非役職者の分布。左が1992年、右が2012年。「一定の年齢に達しても、役職に就けなくなっている」ということ、そして「役職に就ける人とそうでない人の格差が広がっている」ことが分かる(出典:リクルートワークス)

 右のグラフは、一定規模の企業に所属している人たちが、どの年齢でどういう役職についているのかを表しています。ここから分かるポイントは2つ。一つは「一定の年齢に達しても、役職に就けなくなっている」ということ、もう一つは「役職に就ける人とそうでない人の格差が広がっていること」です。

 「年功序列ではなくなったということだろう、大歓迎じゃないか」という声が聞こえてきそうです。確かにその通りなのかもしれませんが、役職に就けない人が増えるということは、本人がそれを選んでいるというケースがあるとしても、企業、特に組織を維持していく上では大きな問題になってきます。次のグラフを見ればよく分かるでしょう。

ミドルの役職別コア・モチベーション誘因の獲得状況(出典:リクルートワークス)

 これは、仕事をしていく上でのモチベーション誘因と、就いている役職の状況を示している図ですが、「役職者であること=組織で働くモチベーションは高い」という当たり前の結果が出ています。逆にいうと、組織で働いて、モチベーション高く、パフォーマンスを発揮してもらうためには、一定の役職に就けないといけない、という言い方もできるかもしれません。

 しかし実際には、役職に就ける人は限られている。ということは、モチベーションが保てないまま仕事を続け、それほど成長もできず、能力も獲得していないで歳だけを重ねてしまった、という人がさらに増え続ける、ということになるのです。けれども、その人たちも将来への不安などから、高い就労意欲は持っている。この構図に「あ、それはまずいことになりそうだぞ」と、ピンときた人も多いのではないでしょうか。

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