靴ブランドのクラークス、「デザートブーツ」という定着イメージを変えられるか新社長が事業戦略方針

» 2014年11月19日 19時00分 公開
[伏見学,Business Media 誠]
クラークスの新作カジュアルシューズ クラークスの新作カジュアルシューズ

 6世紀初頭にブリテン(現英国)で活躍したとされている伝説の英雄・アーサー王が眠る場所として有名なトールの丘の麓、のどかな農村地帯が広がるサマセット州ストリートに本社を構えるのが、老舗シューズメーカーのClarks(クラークス)だ。

 創業は1825年。以来およそ200年にわたってブランド独自のシューズの製造、デザイン、販売を手掛けてきた。英国では「子どもが生まれたらクラークスの靴を贈る」と言われるほど国民に親しまれており、現在は英国のシューズ市場全体でトップとなる約30%のシェアを持つ。グローバルでもカジュアルブランドの中では1位、スポーツブランドを含めると4位につける。

 世界100カ国以上でビジネス展開し、直近の売上高は14億6100万ポンド(約2678億4688万円)、販売靴数は4970万足に上る。日本では31年前の1983年12月に事業を開始した。

日本での認知度アップを

 そんな同社の日本法人であるクラークスジャパンが、このほど経営体制を一新し、新たなスタートを切った。2014年5月に化粧品会社のクラランスからボルメランジェ小林朱美子氏を新社長に迎え入れたことで、積極的な事業拡大を図っていく。「近代化」「効率化」「ブランド強化」などのキーワードを掲げ、今後5年間の目標として、日本での取り扱い商品を大幅に増やし、売上高の倍増を狙う。

ボルメランジェ小林朱美子社長。11月19日に開かれた記者発表会にて ボルメランジェ小林朱美子社長。11月19日に開かれた記者発表会にて

 これまでクラークスジャパンが抱えていた課題の1つが、取り扱い商品の少なさだ。例えば、男性用デザートブーツやコンサバティブな革靴などは消費者からの認知度は高く、大きな販売実績もあったというが、カジュアルシューズやスポーツタイプシューズといった靴は日本での取り扱いがほとんどない状況だった。特に消費者へのアピールの場となる販売店での陳列の少なさが機会損失を生んでいた。

 実際、小林社長が顧客にクラークスの商品ラインアップを紹介すると、「こんなに幅広いタイプの靴を販売していたのか」と驚かれることが多いそうだ。認知度の向上を図るために「日本での取り扱い商品数を80〜100点にもっていきたい」と小林社長は意気込む。

 そこで販路の強化を急ぐ。現在、全国で直営16店舗と百貨店に約100店舗を運営しているが、1店舗当たりの取り扱い品数を増やす。

 オンライン販売にも力を入れる。「Amazon」や「ZOZOTOWN」などのECサイトに加えて、「2015年には自社で販売サイトを立ち上げる予定」(小林社長)だという。

デザートブーツ デザートブーツ

 クラークスの看板商品であるデザートブーツは、2015年に発売65周年を迎える。デザートブーツは、英国陸軍の士官が休日に履くフットウェアをイメージして1949年に開発、翌年に販売開始した。すぐさま英国で人気となり、その後、世界中へ広まっていったという。

 しかし、世界的なヒット商品になったことで「クラークス=デザートブーツ」というブランドイメージを強烈に植え付けてしまったのは否めない。それが結果として、現在もなお日本市場での商品認知度に影響しているのかもしれない。

 小林社長は「クラークスの製品の幅広さを日本の消費者にもっと知ってもらいたい」と訴える。デザートブーツの会社というイメージから脱却できるのか、今後の事業戦略に注目したい。

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