さて、会社でも似たようなことが頻繁に起きているはずです。例えば、指示の分かりにくい上司。丁寧に説明をしてくれるのだけれども、部下はまったく理解できていない。そのうち上司は呆れてしまって「あいつは使えない」と烙印(らくいん)を押してしまう。しかし、部下としては「上司の説明が分かりにくいので、何度も繰り返し理解できるよう説明を求めても無駄だった」というケース。
上司の立場から見ると、部下の理解力を疑いがちなのですが、そうではない場合も少なくないのです。例えば「自分が分かっていることは、相手も理解しているだろう」と考えてしまうと、この罠にハマってしまいます。
道案内のケースでいうと「この場所は誰でも知っているはず」という前提で説明しても、相手がその場所について知らなければ、どれだけ説明しても通じない。思わず「そんなことは常識じゃないか」と文句を言いたくなるようなことでも、相手は知らないということを想定しなければならないのです。
さらに「個人のクセ」のようなものもあります。例えばある人は、東西南北を意識して道案内を行う、別の人は建物や店舗などの目印を意識して行う、とします。この2人の説明は、同じ場所を指していてもかなり違うはずですし、お互いの道案内を「分かりにくい」と感じてしまうはずです。
細かく丁寧に説明すればするほど、結果的に溝が深まってしまうのです。ね、ビジネスの現場でも似たようなことが起きているでしょう?
先述した、わたしの事務所に迷いながら来た人の多くは、結局スマートフォンの地図を頼りにやってきました。自分で住所を検索して、自分で地図を確認しながらたどり着いたのです。実は、わたしの事務所開きにいらしたお客さまの多くも、その方法でいらしたようです。情報が少ない分、自分でそれを補って、目的を果たす。当たり前といえばそれまでですが。
部下に仕事を依頼したり、報告を受けたりする場合、どうしても「必要以上に詳細に説明」したり、逆に「自分が報告を受けたい、つまり、自分だけが理解しやすいスタイル」で報告させたりしがちです。しかし、そうすればするほど仕事をする部下が混乱しないとも限りません。
結果的に、丁寧に説明する労力、説明を補足する労力、さらには相手に対する怒りの労力まで使った上に、相手は先に進めないという悲劇になってしまう。
仕事で部下とのやりとりがうまくいっていない場合、まずは自分のコミュニケーションスタイルを再検討してみてください。下手な道案内になっている可能性が大です。そしてそれが分かったら、少し手を抜いてみることをお勧めします。そう、相手を信頼して。きっと自分で調べ始めますよ。大丈夫、まずは期待することから始めてみましょう。
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