オリックスはなぜ弥生を買収するのか狙いは小規模事業者(1/2 ページ)

» 2014年11月14日 03時15分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
弥生が開発・販売する「弥生会計」「やよいの青色申告」

 オリックスは11月13日、小規模事業者向け会計ソフトを開発・販売する弥生を買収すると発表した。買収金額は約800億円。年内をめどに、MBKパートナーズより弥生の株式99.9%を取得する。

 弥生は、会計ソフトの「弥生会計」や確定申告ソフト「やよいの青色申告」など、小規模事業主や個人事業主向けの業務ソフトの開発・販売で知られる。かつては米Intuitの日本法人だったが、2003年にMBOで独立して現社名の弥生に変更。2004年にライブドアに買収され、後にライブドアホールディングスから投資ファンドのMBKパートナーズに売却されたという経緯がある(参考記事)

 買収完了後も、弥生の社名や商品名を変更したり、事業内容が大幅に変わったりということはなく、岡本浩一郎社長以下、弥生の経営体制はそのままで、今後も事業を続けるという。オリックスが弥生を買収する狙いは何か? 発表会での内容を中心にまとめた。

弥生の顧客層である、小規模事業者へアプローチしたい

 オリックスから見た弥生の魅力とは何だろうか。

 弥生は、会計ソフトのNo.1企業であり、国内シェア68%(2014年)を誇る。パッケージソフトが有名だが、購入したユーザー約125万社のうち、約41万社が有償のYSS(弥生サポートサービス)会員として登録していることが、安定した経営基盤になっている。YSS会員にはサポートや無償バージョンアップなどのサービスを提供するため、継続率は9割以上と非常に高い。会員企業から得た年会費などのストック収入は、弥生の売り上げの約8割を占めている。

 さらに業務ソフトは成長市場といえる。「業務ソフトの市場には、高い成長ポテンシャルがある。消費税増税、マイナンバー制など法改正があるたびに、ソフトのアップデートなどが必要になる。また、毎年日本では20万以上の会社が起業しており、この人たちにとって会計ソフトは必ず必要になるもの。この成長市場は魅力的」(オリックス 代表執行役副社長 グループCFO 浦田晴之氏)

弥生ではパッケージソフトを販売して終わりではなく、ユーザーを会員に登録するよう誘導。年会費を集めることで安定した収入を得ている

 シェアの高さ、安定した事業基盤、市場の成長性に加え、オリックスから見た弥生の最大の魅力は「顧客基盤として小規模事業者を多く抱えている」という点だ。「オリックスの顧客は中規模事業者が多いが、弥生と組むことによって、これまでリーチできていなかった小規模事業者へのアクセスが可能になる」(浦田氏)、「オリックスの営業は典型的なプッシュ型営業であり、コアのお客様は中堅・中規模企業。数が多い小規模企業にアプローチするには、プッシュ営業ではコスト的に見合わない」(オリックス 執行役 国内営業統括本部 新規事業開発担当 松崎悟氏)

中規模企業を多く顧客に持つオリックスに対し、弥生の顧客はほとんどが小規模企業

非金融分野の収益を伸ばしたい

 弥生を買収するオリックスにはもう一つ、「非金融分野の収益を伸ばしたい」という狙いがある。

 オリックスはリース、ファイナンス、レンタル、シェアリング、保険など多様な事業を展開している。事業内容を金融と非金融に分けると、現在は半分以上が非金融分野の収益。会社として、非金融分野での収益を大きくしていきたい、金融以外の収益の源泉を多様化していきたいという気持ちが強くある、と説明する。

 弥生の顧客基盤を生かして、新しいサービスを提供する計画もある。「オフィスレンタル事業や、節税メリットのある商品の提供などをしていけるのではないか。与信とは関係ない部分で、ユーザーにより良い事業環境を提供する商品を作っていきたい」(松崎氏)

オリックスでは、弥生の持つ顧客基盤を生かし、小規模事業者向けに新たなサービスメニューを展開していくという
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