スマホバブルがはじけた3つの理由神尾寿の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年11月13日 08時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

神尾寿(かみお・ひさし)

IT専門誌契約ライター、大手携帯電話会社の業務委託でデータ通信ビジネスのマーケティングなどを経て、1999年にジャーナリストとして独立。現在はIRIコマース&テクノロジー社、イード社の客員研究員も務める。携帯電話、非接触IC、自動車・ITSなどの市場・業界動向について、執筆や講演、企業コンサルティングを行っている。著書は「自動車ITS革命!」など。


 2007年の初代「iPhone」の発売をきっかけに、日本国内でも急速に拡大したスマートフォン市場。とりわけ2013年度は、トップシェアを誇るAppleのiPhoneシリーズの好調が市場全体をけん引し、スマートフォンの出荷比率が端末販売市場全体の75.1%(MM総研調べ)を占めるなど、"スマホバブル"の様相を呈していた。

 しかし、ここにきてスマホバブルの雲行きが怪しくなってきた。

 2014年10月30日にMM総研が発表した最新の統計資料によると(参考記事)、2014年度上期の端末出荷台数は過去最低の1578万台、そのうちスマートフォンの出荷台数は1050万台となった。端末出荷台数は前年同期比で4.1%の減少であり、端末販売全体に占めるスマートフォン比率も66.5%に低下。端末販売全体が縮小しているのはもちろんだが、これまで市場全体のけん引役だったスマートフォンが大きく失速してしまっている。

フィーチャーフォンからの移行特需の「終わり」

携帯電話端末出荷台数の推移・予測(出典:MM総研) 携帯電話端末出荷台数の推移・予測(出典:MM総研)

 MM総研では2014年度通期の端末総出荷台数を3530万台(対前年度比10.4%減)とした上で、スマートフォンが2510万台(15.2%減)、フィーチャーフォンは1020万台(4.0%増)という予測を立てている。台数自体はスマートフォンの方がフィーチャーフォンより多いものの、対前年度比の伸びを見れば、フィーチャーフォンの方が大きく増加。総出荷台数におけるスマートフォン出荷台数比率は71.1%となり、対前年度比から4ポイントも落ちてしまう模様だ。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行特需が終わりを迎えたといってもいい状況になってきている。

 しかし、フィーチャーフォンの市場シェアは今年3月末時点で約50%。未だ6000万台弱が残されている。買い換え需要の中心が、トレンドに敏感なアーリーアダプター層(先進層)からマジョリティ層(一般ユーザー層)に移ったとはいえ、移行特需が終わるには早過ぎるように思える。

 なぜ、移行が急減速してしまったのか。理由は大きく3つある。

 1つは今年春先まで行われていた、過度なキャッシュバック競争の反動だ。周知の通り、2013年から2014年の春商戦にかけて、キャリア各社がMNP(番号ポータビリティ)での乗り換えに対して、1ユーザーあたり4〜5万円ほどのキャッシュバックを提供して拡販競争を繰り広げた。ひどい例では、複数契約でMNPを使いキャリアを乗り換えると、数十万円のキャッシュバックが支払われるケースもあった。この高額キャッシュバックの適用対象になったのが、iPhoneをはじめとするスマートフォンだったのである。

 しかし2014年度に入ってから、総務省の指導やキャリア各社の自主的な販売方式見直しがあり、高額なキャッシュバック競争が下火になった。今までのように「高額キャッシュバックがもらえて、(フィーチャーフォンよりも)購入価格が安くなるから」という"目先のお得感"でスマートフォンが買われることがなくなった。

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