それでも「メジャー」に挑戦する――阪神・鳥谷の人間性新連載・赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2014年11月13日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

保障された未来への道を捨てて

 「ムードメーカーで何かと大きな話題を提供し、派手な印象が強い西岡剛とは明らかに対照的な性格。もう少し我が強くて『オレがタイガースを大きく変えてやるぞ!』という気持ちを前面に出してくれればいいと思う時もあるが、鳥谷はただチームにいるだけで周囲に安心感を与える男。タイガースにいない稀有(けう)な部類の選手だから、みんなの精神的支柱になっているのです。

 喜怒哀楽を表に出さないから関西人ウケするキャラではないのだが、とんでもない言動でトラブルを起こすこともない。ど真ん中を突っ走るぐらいに『地味』なんだけど、球団上層部や親会社の阪神電鉄本社幹部たちからのウケはかなりいい。鳥谷が将来のタイガース幹部候補生であることは、まず間違いない」とは前出の阪神OBの弁だ。

 考えてみれば、現在阪神でGM職を務める中村勝広氏や、現場でタクトを振るう和田豊監督も現役時代は「地味」で派手な選手ではなかった。ほとんどムダ口を叩かないで優等生を貫き通したからこそ今がある。

 ところが――。鳥谷はそうした“保障された未来への道”をあえてかなぐり捨てて、夢のメジャー挑戦を果たすべく荒波への大航海に臨もうとしている。「今オフのメジャーリーグでは遊撃手、もしくは二塁手が売り手市場」という見解もあって二遊間が守れる鳥谷には多少の追い風となり、水面下ではトロント・ブルージェイズやワシントン・ナショナルズなどの複数球団が獲得に名乗りを上げているとも報道されているとはいえ、お世辞にも争奪戦となって三顧の礼で迎えられるような状況とは言い難い。

 「日本人内野手はメジャーで成功しない」と言われているだけに、新天地で未知の壁をぶち破るのは決して容易なことではないはずである。条件面でも今季手にしていた年俸3億円から大幅ダウンを強いられるのは確実で失うものはかなり大きい。

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