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» 2014年11月12日 07時00分 UPDATE

今どきの人工知能:人工知能の本質は? 「近さ」の判断が不得意 (1/4)

人間の脳は、少ないデータから、いかに人より早くパターンを見つけるかという競争をやっています。似たものを見つけた際に「近いかどうか」の判断は知能において非常に重要な処理です。

[松尾豊, 塩野誠 ,Business Media 誠]

集中連載「今どきの人工知能」について

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本連載は松尾豊、塩野誠著、書籍『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』(中経出版)から一部抜粋、編集しています。

人工知能の急激な進歩により、社会は今後数年で劇的に変化していきます。政治、経済、教育、医療、労働――など、学習能力を身に付けた機械が人間の能力を越えたときに起こる未来とは? そこには、「常識」が反転するロボット社会への展望があります。

東京大学スーパー准教授にして、人工知能学の権威である松尾豊氏が、ビジネス戦略家の塩野誠氏からの率直な疑問に、対談形式で答えながら未来の可能性を語ります。

すぐそこまでせまってきた人工知能社会に、知的興奮が止まらない!


著者プロフィール:

松尾豊(まつお・ゆたか)

東京大学大学院工学系研究科総合研究機構、知の構造化センター、技術経営戦略学専攻准教授。1997年、東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年、同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より、産業技術総合研究所研究員。2005年10月より、スタンフォード大学客員研究員。2007年10月より現職。2002年、人工知能学会論文賞、2007年、情報処理学会長尾真記念特別賞受賞。人工知能学会編集委員長、第1回Web学会シンポジウム代表を歴任。

塩野誠(しおの・まこと)

株式会社経営共創基盤(IGPI)パートナー・マネージングディレクター。IGPIシンガポールCEO。慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニー、起業、ライブドアなどを経て現職。主に通信、メディア、テクノロジー、エンターテインメント領域の企業や政府に対し戦略のアドバイスを行い、政府系実証事業採択審査委員も務める。


塩野: 抽象化の定義ですが、いままでのお話から判断すると、似たものを見つけた際に、その間の近似値を設定する問題だと思います。近似値をどれくらい取るかを「似ている」と定義するなら、それを設計している人間の思想が入ることになりそうですが。

松尾: 核心的なところに近づいてきたようですが、「近いかどうか」の判断は知能において非常に重要な処理です。近さを決めるにはいろいろな方法があり、近さには多様性もあります。いろいろな角度から見て、近いとも言えるし、遠いとも言える。そしてその中でも、「良い近さの基準」「適切な近さの基準」を選ばなければならない。これができると、あるストーリーとあるストーリーは実は近い、だからこのパターンがある、と判断できるようになります。

塩野: 「あの人はあの芸能人と似ているよね」、「いや、ぜんぜん似てないよ」みたいな話ですか。判断する人によって近さのレンジは違いますね。

松尾: レンジも違いますし、近似に対する人間の特性のような部分も関係します。ビッグデータの話と一見、逆のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、人間は少ないデータから、いかに人より早くパターンを見つけるかという競争をやっています。なぜなら、他の生物や個体に勝って生き残るには、「異変にいかに早く気付くか」が決定的に重要だからです。異変に早く気付くために、膨大な量の「普通のこと」を知っておかなければならないのです。

 少ない例からパターンを見つけるには、少ない事例の中でも、グルーピングしなければなりません。例えば、この例とこの例は、厳密に言うと違っているが一緒と考えていい、そして同じグループとして扱ったとき、共通する要素は何かとか、共通に表れるパターンは何かを見つけて取り出す。それによって、他の人が一見すると違うことを経験していると見えることでも、賢い人は異なる例からも抽象化し、これはあのときのこれと同じだ、このパターンならこんなことが起きるはず、などとパターンを抽出できるのです。

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