実はこの「e-ミミ」はすべて「人力」、沖縄県うるま市にいる「速記タイプのプロ」たちが行っているのだ。そんな「世界最高の日本語音声認識エンジン」の裏側を同社代表取締役社長の一瀬宗也氏が教えてくれた。
「スマホに向かって話したことを、沖縄県うるま市のセンターでスタッフが聞いて、それをリアルタイムで打ち出していくというシステムです。基本的には2人のペアが速記を行って、修正係が1人、文字が離れないようにサポートをする係が1人。ウチの速記スタッフのレベルは非常に高く、速いペアになると1分間で446文字で打つ。今、最も速い自動速記も1分400文字はいかない。ギネスに申請すれば認定できるほどだと自負しています」
驚異的なスピードが達成できる理由は受けとった文章を速記係の2人が瞬時に判断して半分に分け、打ち込んでいるからだ。高速タイプの腕はもちろんペア同士の“阿吽の呼吸”が必要なのだ。
ただ、ひとつ問題がある。どんなに集中力のある人間でもハイスピードの速記はせいぜい10分間ほどしか続けられない。そこで、「e-ミミ」では速記係の2人を10分ごとにどんどん交代させて、休憩を挟んで長時間の速記を行っていくというのだ。例えば3時間の講演などは、8人体制でのぞむという。
このような「プロ」を育成するのに3〜6カ月はかかる。自己流のブラインドタッチを徹底的に矯正するため、キーボードに段ボールを被せて本当の“ブラインド”にしたり、短期記憶を磨いたり、さまざまなトレーニングをくぐりぬけた70名の精鋭がいるという。
職人的な技術をしっかりとしたシステムに組み込んだ「e-ミミ」だが、実はこれはもともと聴覚障害者のための「同時通訳」として生まれたサービスだ。現在、日本には36万人の聴覚障害者がいるが、手話ができるのは14%に過ぎず、ほとんどは唇の動きを読んだり、筆談に頼っているのが現状だ。
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