産業用不動産への投資でオンリーワン 三菱商事UBSリアルティはなぜ果敢に挑戦できたのか?ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(2/5 ページ)

» 2014年11月10日 08時00分 公開
[文:山下竜大, 構成:伏見学Business Media 誠]

大薗 他社が扱わないという意味では差別化として理解できますが、ビジネスとして成り立つかどうかという観点では最初から見通しはあったのでしょうか。

 おっしゃる通りで、ビジネスにするためには、流通していないアセットをいかに取得するか、一見すると流動性がないものにいかに投資してもらうかの2つが大きなポイントでした。

 企業に「不動産を売却しませんか」という話をすると、「遊休資産はありません」という回答がよくあります。このような状況からも分かるように、産業用不動産を売却して換金できるということを知らない顧客がまだまだ多いので、アセットの取得では、企業ごとにカスタマイズした売却メリットを提案するCRE戦略提案(企業不動産の管理、運用に関する戦略の一環としてIIFへの売却メリットを提案すること)に労力を割いています。

 企業は、無借金だったり、借金が多過ぎたりと、いろいろな状況に置かれている中で、アセットファイナンスを提案していくには、顧客の状況にあったカスタマイズが不可欠です。元々商社は、企業に足りないパーツを提案することが本業であり、そのノウハウは持っています。当初はそのノウハウを使いこなせる人材をそろえることが大きな課題でした。

 一方、流動性のないものに対して投資家からお金を預かるのは、換金性の問題で不安を与えます。そこで、「継続性」と「汎用性」を物件取得基準としています。継続性では、業界分析を含めた広範な範囲に渡る徹底した調査を行い、その企業が継続的に存続し、その施設が継続的に利用される蓋然(がいぜん)性を確認します。例えば、昨年取得した化学品タンクターミナルでは、産業調査によって化学業界がどのような状況なのかをしっかりと把握しました。

 汎用性には、2つの観点があります。例えば、高機能化学品を扱う企業であれば、ほかの企業でもこの施設を使えるという汎用性と、高機能化学品が駄目なときには土地として物流用途で使えるといった汎用性です。これにより、単に流動性のないものに投資しているのではなく、現状以外の利用方法もしっかりと想定できる施設を選別して投資しているので、安心して投資できるということを投資家の皆さまに理解していただいています。

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