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» 2014年11月10日 08時00分 UPDATE

ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:産業用不動産への投資でオンリーワン 三菱商事UBSリアルティはなぜ果敢に挑戦できたのか? (1/5)

産業用不動産に特化したJ-REITを展開する三菱商事UBSリアルティ。同社はどうして他社が参入しない分野にビジネスチャンスを見出したのか。そのユニークな戦略を聞いた。

[文:山下竜大, 構成:伏見学,Business Media 誠]

 賃貸マンションやオフィスビルなどに投資する不動産投資信託(J-REIT)が好調だ。2020年の東京オリンピック開催やアベノミクスへの期待感などから、同市場は右肩上がりの傾向にある。

 そうした中で、研究開発施設やデータセンター、空港のメンテナンスセンターなどの産業用不動産に投資するという、極めて珍しい取り組みを行っているのが、三菱商事・ユービーエス・リアルティ(以下、三菱商事UBSリアルティ)だ。

 同社のインダストリアル本部が運用する産業ファンド投資法人(IIF)は、2007年に設立、東京証券取引所に上場以来、産業用不動産に特化したJ-REITとして新たな価値を生み出し続けている。収益性においては、投下資本利益率(ROIC)、営業利益率(ROS)ともに業界平均を上回り、ROICは2008年〜2012年の5年間で業界平均よりも1.9%、ROSは5.4%高い。

 このような実績などが評価され、2013年12月、優れた競争戦略を持つ企業や事業を表彰する「ポーター賞」(一橋大学大学院 国際企業戦略研究科主催)を受賞した。

 本稿では、IIFに見られる独自性の高い戦略について、ポーター賞の運営委員会メンバーである一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美教授が、三菱商事UBSリアルティの代表取締役社長である辻徹氏にインタビューした模様をお伝えする。

商社の知見を生かして市場を創造

大薗 ポーター賞を受賞されて、社内外の反響はいかがだったのでしょう。

 ポーター賞の受賞について最も大きな反響が来たのは三菱商事からでした。三菱商事の中でポーター賞がこれほどメジャーな存在だとは思っていませんでしたので驚きました。投資家の皆さまも、マイケル・E・ポーター先生の名前をよくご存じで、多くの好意的な反応がありました。

大薗 ポーター賞を受賞した大きな理由でもありますが、通常とは異なり産業用不動産の投資に特化したJ-REITであることがIIFの大きな特長です。ここにビジネスチャンスを見出した背景をお聞かせください。

三菱商事UBSリアルティの辻徹社長 三菱商事UBSリアルティの辻徹社長

 オフィスビルや商業ビル、住宅などへ投資するJ-REITが先行している中で、産業用不動産に特化したJ-REITはありませんでした。こうした中で、総合商社の選択肢としては、知見のある物流分野をスタートラインにするのがセオリーですが、これまでにJ-REITになっていない産業用不動産というもう少し広いエリアを考えました。

 総合商社のネットワークは、モノの流れからロジスティクスの流れ、間接金融のようなサービスまで、産業全般にわたります。こうした分野には早くから取り組んでいましたが、産業界をダイレクトにつなぎ、直接金融でサービスを提供することはやっていませんでした。そのためには、個別の企業のネットワークが欠かせないのはもちろん、金融の知見も必要になります。

 これまでに培った企業との信頼関係を生かしながら、より広範なビジネスチャンスが見込める分野は何かを考え、物流よりも広範な分野で既存のネットワークや資産が活用できる産業用不動産こそがビジネスチャンスだと判断しました。

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