“立派な情報操作”にご注意を! カジノにまつわるいかがわしさ窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2014年10月28日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

日本は「素人」ではない

 日本のIRにまつわる報道をよくご覧になっている方ならば一度は耳にしたことがあるだろう。というのも、これはラズべガス・サンズだ、MGMリゾーツ・インターナショナルだという日本進出を公言しているIRオペレーターたちがメディアのインタビューのたびにふれまわっている「キーメッセージ」なのだ。

 かく言う私自身も、かつて取材した海外IRオペレーターや専門家などがさも「常識」のように語るので、「なるほど、そういう考え方が主流なのか」と一部では納得していたのだが、IRの取材を進めれば進めるほど、この主張に大きな矛盾を感じるのだ。

 世界的にみれば、カジノは自国の企業が運営するのが普通だ。いやいや、日本がIRの「お手本」としているシンガポールは2つとも外資じゃないのと思うかもしれないが、シンガポールのほうが世界のカジノ事情を振り返れば「異常」なのだ。

 シンガポールはもともとカジノ参入に対して否定的だったが、マカオの台頭で観光産業が衰退傾向にあったことや国内の雇用問題などを解決するため、かねてから反対していた建国の父・リークアンユが「容認」に転じたのである。そんな消極的な姿勢に加えて、東京23区程度の「小国」で金融ビジネスや製造業などがメインということで、海外から客を呼べる大規模リゾートを運営するプレイヤーがいなかった。

 だから彼らには海外企業に依存せざるをえなかった。「カジノは素人だから」なんてしょうもない理由で、国家の威信をかけたビックビジネスを外資に丸投げしたわけではないのだ。

 むしろ、海外ではカジノの「素人」がバンバン参入して成功をおさめるのが当たり前だ。例えば、フィリピンのマニラ湾開発で開業予定の4つのリゾートのなかのひとつ、ソレアリゾートを運営しているのは、フィリピン港湾王のエンリケ・ラソン。「ギャンブル嫌い」を明言し、港でコンテナを積んでいるほうが性に合うという大富豪のカジノデビューは、中国人富裕層をガッチリつかんで非常に順調に滑り出している。

 しかも、厳密には日本は「素人」ではない。コナミやアルゼUSAというカジノ機器製造メーカーがあるし、日本金銭機械株式会社の紙幣識別機をはじめ、日本の技術は世界中のカジノで活躍している。唯一の“弱点”ともいうべき、中国人富裕層などのハイローラーの斡旋をするジャンケット業者とのコネクションに関しても、ユニバーサルエンターテイメント、セガサミー、パチンコ各社がマカオ、韓国、フィリピンのカジノビジネスに参入することで着々と構築しつつあるのだ。

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