日本の“超高齢化”が止まらない。2014年9月に総務省が発表した人口統計によると、65歳以上の高齢者人口は3296万人、総人口に占める割合は25.9%と、ともに過去最高を記録した。さらには8人に1人が75歳以上となった。この高齢化率は諸外国と比べても群を抜いており、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると見られている。
そうした中で深刻な問題になっているのが、医療費の増大である。厚生労働省の調査によると、ここ数年のうちに毎年約1兆3000億円ずつ増え続けた結果、2013年度は概算で39兆3000億円もの医療費に膨れ上がった。国民1人当たりで30万8000円、75歳以上はその3倍を超える92万7000円に上る。
「このままでは国の税収(約47兆円)に医療費が到達するかもしれない。危機的な状況だ」と警鐘を鳴らすのは、ファンケルの会長兼グループCEOを務める池森賢二氏だ。
では、日本の医療費問題にどう立ち向かうのか。池森氏は「医療費を増やさないためには、人々が病気にかからないようにすればいい」と述べる。現在、日本人男性の平均寿命は約80歳、女性は約86歳で、健康寿命は約71歳、約74歳となっている。つまり、男性は約9年、女性は約12年、何らかの病気を抱えて生きていくことになる。
「この期間を縮めれば医療費は削減できる。理想的なのは、人生の最後まで元気に生きる“ピンピンコロリ”である」と池森氏は力を込める。
そこで同社が取り組むのが予防医療である。ファンケルグループ傘下の事業会社で、サプリメントや青汁などの健康食品を提供するファンケルヘルスサイエンスが予防医療事業に本格参入する。11月1日から「グッドエイジングプログラム」をスタートし、遺伝子検査によって将来の生活習慣病リスクを解析するとともに、専用サプリメントや生活習慣改善を提案していく。
主なターゲットは、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞など生活習慣病の発生リスクが増加する50歳以上の中高年。厚労省によると、日本人の3分の2近くが生活習慣病で死亡しているため、これに向けた対策は大きな意義がある。
なぜ遺伝子検査なのか。予防医療専門クリニックである医療法人財団健康院「健康院クリニック」の担当医師である山崎義光氏によると、生活習慣病の原因の3割は遺伝子因子によるものだという。つまり、AさんとBさんという2人の人間がいて、仮にまったく同じ生活を送っていても、遺伝子の違いによって病気にかかるリスクは異なるのである。
そこで遺伝子検査することで、事前に注意喚起を促すことが可能だという。「万が一、検査によって脳梗塞のリスクが明らかになったとしても、病気が発症する前、あるいは初期段階で対応すれば、リスクを最小限に防ぐことができる。最善の場合、発症させずに済むかもしれない」と山崎氏は説明する。
患者の意識の面でも遺伝子検査の効果は大きい。長年にわたって生活習慣病に携わってきた山崎氏の経験から、画一的な食事指導や運動指導だと継続的な効果は出ないのが実情だという。遺伝子検査によって自分自身の体質を知ることが、意識を変える意味でも重要なのだとする。
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