「ワーク」についてはもう1社、みなさんご存じの大手IT企業が採用している。米Appleである。
同社は2013年秋から、クラウドサービス「iCloud」を基盤とした業務アプリケーション群「iWork」を提供している。iWorkの内容はMicrosoftにおけるOfficeに相当するもので、既存のWordやExcelファイルも取り込んで利用できる。これをもって、AppleもGoogleと同様、個人のビジネスニーズに応えていこうという思惑がある。
Appleは今や世界最大のIT企業にのし上がったが、事業内容の大半は一般消費者(コンシューマー)向けで、ビジネス向けには本腰が入っていないようにも見える。したがって、iWorkを提供しても企業向けIT市場にはさほど影響がないように受け取られがちだ。
しかし2014年7月、そうした見方を大きく覆す発表があった。Appleと米IBMの提携がそれだ。両社の提携は、IBMが持つビッグデータ分析のノウハウをAppleのスマートフォン「iPhone」およびタブレット「iPad」向けに提供し、業務アプリケーションの新しいひな形を通じて、企業のモバイル利用を変革していこうというのが狙いだ。
AppleとIBMにおけるこれからの協業の中で、iWorkがどのように扱われるかは現時点で不明だ。ただ、ビジネスニーズを熟知するIBMのノウハウが注入されて、一層磨き上げられる可能性が高い。
両社の提携について、Appleのティム・クックCEOは、「IBMの優れたビッグデータ分析のノウハウをAppleの端末ユーザーに提供することは、Appleにとっても巨大な企業向け市場へのさらなる参入の機会が開かれることになる」と語っている。また、IBMのバージニア(ジニー)・M・ロメッティCEOも、「両社の提携は、人々の働き方や企業の役割、さらには産業構造の変革をももたらすことになるだろう」との見解を示している。
こうして見ると、非常に興味深いのは、GoogleもApple+IBM陣営も「モバイル機器を活用した働き方の変革」を訴えていることである。「ワーク」はその象徴的な言葉といえる。
果たして、企業向けIT分野のソフトウェア製品やサービスの名称として、「ワーク」はどこまで浸透するだろう。今後、「オフィス」や「エンタープライズ」に取って代わるほどになるだろうか。それはまさしく「個々人の働き方の変化」を映し出すことにもなりそうだ。
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