脳は褒められることを好みます。さらに、気持ちがポジティブになると脳の神経細胞が増えることも分かっています。報酬系という脳の中の働きは、生きていく上でも学習していく上でも、非常に重要な機能です。
朝起きて、なぜ会社へ行くのでしょうか。単に習慣となっているので、その理由を考えることはないかもしれません。しかし、給与カットなどということがあると、会社へ行く意欲は減ってくるはずです。
このことから、私たちはなんらかの報酬がないと行動を起こさないことが分かります。人のために何かをしているときでも、自分が褒められるという報酬を得ることで、脳が満足しているのです。
人のために行動することが自分の快感になるからこそ、人のために行動できる――つまり、褒められることで脳が育っていくわけです。
子どものときであれば、親や先生が褒めてくれることで、脳の機能はよくなっていくでしょう。しかし、社会に出るとなかなか自分を褒めてくれる人はいなくなります。
同僚や上司に褒められるということは、そんなにめったにないことです。だからこそ、自分を褒めてくれる人を探しておきましょう。
配偶者もいいでしょうが、褒め上手は少ないかもしれません。直接利害関係のない友人を持つこと。例えば、中学校の同窓生などは、褒めてくれる相手としてはいいのではないでしょうか。
褒められることには、もうひとつ別の要素があります。脳は、おいしいものを食べたいとか遊びに行きたいなど、目先の快感を求めてしまうものなので、長期的な目標にはなかなか向かうことができません。勉強して資格をとって新しいビジネスを始めるというような、ちょっと先のことになると意欲を維持することが難しいのです。
受験を考えても同じでしょう。1年間勉強すれば大学に合格するということが分かっていても、テレビゲームをやってしまうのです。
そこで重要なのが報酬系です。目先のことだけでなく、いい大学に行けば自分のやりたいことができて、給料のいい会社へ行けるとか、長期的な目標にも報酬があると理解できれば、意欲を維持できるのです。
受験というのは、単に合格するだけでは勉強の意欲が出にくいのですが、希望の大学に合格したその先の人生をうまく描ければ、強いモチベーションにつながっていくわけです。
広い意味ではそれも褒められることと同じです。
生理学研究所の定藤規弘教授らは、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を使って平均年齢21歳の男女19人に、褒められる場合と、お金がもらえる場合の2つの状況を比較しました。
褒められたときに反応する脳の場所は、お金をもらったときに反応する「線条体(せんじょうたい)」という場所と同じだったのです。現代社会では、お金をもらえるということと、脳の中の報酬系はリンクしているというわけです。
つまり褒められるというのは文字通り、言葉で褒めてもらうということもありますが、自分が得すること、つまりお金がもらえることや儲かるということは、強く褒められたことに匹敵して、脳の機能がアップしていくのです。
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