企業のIoT対策、まだ間に合うのか──「もう、それをビジネスに変えるフェーズに入っている」ITpro EXPO 2014 レポート(2/2 ページ)

» 2014年10月15日 15時44分 公開
[岩城俊介ITmedia]
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IoTソリューションは開発されつつある──各分野の事例

 これらをベースに、各分野への具体的な取り組みも進める。IoT時代のクルマ社会を提案する富士ソフトは、Tizen IVI(インテルの車載情報機器向けプラットフォーム)を軸にした車載+生体センサーで得た大運転状況のデータを分析し、危険運転の要因を検出。分析により危険な状況と判断されると、ドライバーへのアラートと運行管理者へ同時に通知する仕組みを提案する。得られたビッグデータを可視化するエンジン「toorPIA」により、これまで人の手(データサイエンティストなど)が入り、時間がかかっていた膨大な量のデータの解析をほぼ瞬時(ニア・リアルタイム)に、「業務ユーザー側」で分析できるようになる。

photophoto 富士ソフトの活用事例

 産業機器向けコントローラを展開するオムロンは、インテルプロセッサを採用した新たなマシン制御コントローラを開発。従来の専用ASICの約5倍(ATOM)から約20倍(クアッドコアCore i7)に制御性能が向上したとし、高速なマシン制御とビッグデータの活用を両立するデータベース直結コントローラを2013年に投入した。液体をこぼさず高速に搬送する高い「制震制御」の技術もこの一環となる。

photophoto オムロンの事例

 FA(Factory Automation)システムを展開する三菱電機は、IoTで得たデータを含むビッグデータを、製造装置の障害を予知する「予防保全」にも使う。生産性の向上、品質の向上、環境性の向上、安全性の向上、これら工場の課題を“見える化”する同社のFA総合戦略「e-Factory」を、IoT時代にはさらに運用拡大する計画とする。

 プロセッサを製造するインテルの半導体工場も三菱電機製コントローラをデータゲートウェイとして使う。製造装置に備えたセンサーで稼働状況をモニターし、毎時5Tバイトもの製造データを生成。センサーデータを解析して障害の予兆を把握し、歩留まりも改善。結果として、年間900万ドル(約9.6億円)のコスト改善を実現した。インテルと三菱電機は共同で、この活用事例の実用化を2015年内に目指す。

photophoto 三菱電機の事例とインテル半導体工場で得られた効果


photo 以後10年で世界のエネルギー需要も急増する

 急増する機器数やデジタルデータもそうだが、以後10年で世界のエネルギー需要も急増する。今後15年、各業界で1%効率を高める「Power of 1%」に取り組むと、例えば航空業界は約3兆円(1%の燃費向上)、ヘルスケア業界は約6.3兆円(1%の効率向上)、石油・天然ガス採掘分野は約9兆円(1%の設備投資削減)の効果が見込まれる。

 ただ、具体的にどう効率化を図るか。現時点のままでは立ちゆかない。つまり、IoTとビッグデータを活用しなければ難しい。このような社会的な課題に取り組むのも今後の企業の課題という。

 「IoTをビジネスに結び付け、社会にも貢献する。つまり、取得したデータをどう価値のあるものにするか──をわれわれは挑む。IIC参加メンバーとともに、CPUからソフトウェア、サービスまで、End-to-endでセキュリティも提供する」(インテル常務執行役員 事業開発本部本部長の平野浩介氏)

photo インテルは、IoTの標準化団体「Industrial Internet Consortium(IIC)」をAT&T、シスコ、GE、IBMらと設立。規格の乱立を防ぎ、業界が一丸となって取り組むための活動という

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