在来線運賃と比較して大きな値上がりとならなかった理由は、在来線ルートに比べて新幹線のルートはショートカットされているからだ。
在来線経由に比べて運賃が安くなっている。これが東海道新幹線・山陽新幹線との大きな違いだ。東海道新幹線と山陽新幹線は在来線の複々線区間という考え方で、線路が短縮されても運賃計算に使う距離は同じである。余談だが、過去にこの制度を不服として国鉄を訴えた民事訴訟もあったけれど、運賃決定は鉄道側の裁量の範囲として訴えは退けられた。
北陸新幹線の場合、長野―糸魚川間がほぼ別ルート。糸魚川―金沢間は並行在来線を経営分離するため、同じ路線とは認められない。だから実際の距離に即した運賃となった。ちなみに東北新幹線の盛岡―新青森間も同様だ。
航空運賃と比較してみよう。東京(羽田)―富山の正規運賃は2万4890円(ANA)。東京(羽田)―金沢(小松)間は2万7390円。メディアはこの数字を使って新幹線の安さを強調するわけだけど、航空運賃は予約割引がある。座席数に限りがあるとはいえ、東京―富山のANA旅割60は約2か月前(60日前までの)予約で1万690円〜1万5690円(*)だった。
同じく東京―金沢はANA旅割60が1万690円〜1万3690円で、JAL国内線スーパー先得55(55日前までの予約での運賃)が1万790円〜1万3890円となっていた(*)。新幹線運賃はこの価格帯に収まっている。当日買ってもこの値段だ。絶妙な値付けだ。JR東日本さん、JR西日本さん、あと2000円くらい高くてもよいと思うが……。
北陸新幹線と現行在来線、航空所要時間の比較。米原経由は東海道新幹線で名古屋または米原で在来線特急に乗り換え。時間帯によってはこのルートのほうが早く着く場合がある。航空に関しては航空時刻表に示された飛行時間。空港アクセスと手荷物検査の時間を考慮すると、北陸新幹線との差がさらに縮まる
北陸新幹線と現行在来線、航空運賃との比較。北陸新幹線については東海道新幹線の同距離よりレートが高いとの声がある。ちなみに東京―富山間の近似値の東京―岐阜羽島間は1万1310円。東京―金沢間の近似値の東京―米原間は1万2610円
北陸新幹線と現在の航空機の1日あたり座席数の比較。北陸新幹線「かがやき」は富山と金沢に停車するため合算。各駅停車タイプの「はくたか」まで含めるとこの倍以上になる。航空機は2014年12月の機材で計算
北陸新幹線の停車駅(出典:JR東日本プレスリリース)
さて、いままで速度だけで語られた北陸新幹線に、運賃が設定された。これでいよいよ北陸地域の動きが活発になる。その影響は観光だけではない。
(*:2014年10月8日に調べた同年12月8日の運賃)
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