派遣という働き方に新たな価値を――VSN 川崎健一郎社長「働きがい」をどう生み出すか(2/3 ページ)

» 2014年10月09日 08時00分 公開
[池田憲弘,Business Media 誠]

技術者派遣の新しい取り組み「バリューチェーン・イノベーター」

――VSNが他社(の正社員雇用)と比較して、強い部分はどこでしょうか?

川崎: 一言で言えば「目標が違う」と考えています。一般的な技術者派遣は「クライアントの案件や課題に対して、高い技術力を提供する」ということに重点を置いています。

 一方、VSNでは「クライアントの事業課題をいかに早く解決するか」というところに注力しています。問題を能動的に解決するということを信条としており、クライアントの指示通りに動くのではなく、逆にこちらからソリューションを提案するような動きも推奨しているのです。これを弊社では「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)活動」と呼んでいます。

――VIを直訳すると、価値の連鎖(=バリューチューン)を革新する人(=イノベーター)という意味ですね。新しい価値やソリューションを提案する……そういう業務は、コンサルタントがやる仕事のようにも思えますが。

川崎: おっしゃる通りです。エンジニアでもありコンサルタントでもある――そういった社員をクライアントに派遣することを目指しているんです。なので、弊社ではエンジニアに対し、コンサルテーション能力を備えるための研修も行っています。

 ここでのコンサルテーションとは、問題の発見から、解決法の構築、そしてソリューションの提案(プレゼンテーション)までを行う能力を指します。もちろん技術面での研修もありますが、選抜された人はコンサルテーションの研修を1年間受けてもらっています。

 最近では、VIによる提案が成果に結びついており、2013年は52件の提案が動きました。2014年ではすでに68件の提案が動いています。会社によっては、2億円程度の売り上げを創出したり、新しいシステム約4000万円のコスト削減を実現したというケースもあり、クライアントから表彰されることもありました。

――普通に仕事をこなすよりも、VIのほうが仕事が大変になりそうにも見えますが、なぜVIというコンセプトを打ち出したのでしょう?

川崎: 弊社は「社員の働きがいを高める」というビジョンがあります。このVIを推進することが社員の働きがいを高めることにつながると考えているのです。弊社では社員の働きがいを調査するツールとして「Great Place to Work(参照リンク)」のサービスを利用していますが、その定義によると「信用」「誇り」「連帯感」という3つの指標が社員の働きがいに影響するのです。

 そういった指標で、自分たちのこれまでの仕事を見直してみると「クライアントから言われたことをやるだけで誇りを感じられるのだろうか? クライアントが喜ぶ姿を見ることで誇りを感じるのではないか」となったのです。そしてエンジニアの社員が8カ月議論し、VIというビジョンが生まれました。

 VIはあくまでお客様の利益のためのビジョンですが、エンジニアが主体となって、自分たちがやりたいことを実現していく、という願いも込められているのです。もちろん、最初はこのビジョンにあまり気乗りしない社員もいました。「派遣社員という立場でコンサルテーションまでやるのは、おこがましいのではないか」という考えだったのですが、クライアントから感謝されるにつれ、ビジョンに賛同するようになってくれました。

――感謝されるのはどういう点なのですか?

川崎: もともとこのVIというのは、今まで存在しなかった仕事です。個人的には成果を出したタイミングで感謝されると思っていたのですが、実際にはソリューションを提案したタイミングで驚かれ、感謝されましたね。「ウチの社員よりも考えてくれている」といった声もあったくらいです。

 VIを続けるうちに、社員が任される仕事も変わりました。プロジェクトのリーダーになったり、新規プロジェクトに入れられたりと、重要なポジションにつくようになったのです。こうした傾向は、社員の成長にもつながります。仕事における成長はトレーニングによる面もあると思いますが、やはり一番は現場の経験です。

――なるほど。「自社の社員より考えてくれている」と言われれば、うれしいですよね。

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