大石運転士の趣味は職場の仲間との鉄道映画制作だった。その腕を見込まれて、国鉄労働組合の依頼でPR映画を作った。この映像が催しの前半で紹介された。新幹線の運行を支える保線や車両基地の保守を紹介している。いずれも深夜の作業で、過酷な業務だ。しかも国鉄の合理化政策で職員の負担は大きい。そんな様子を映し出し「合理化一本槍の会社と戦おう、職場の安全を守ろう」という趣旨だった。
「趣旨はちょっとアレですけど、保線や当時の機関車などは、今となっては珍しい映像だから」という前置き付きの上映だった。確かに、新幹線50周年記念という催しで、労働組合の戦いというテーマには違和感がある。しかし、その映像に映し出された国鉄職員の姿に心を打たれた。仕事がきついと待遇の改善を求める声や表情の中に「オレが新幹線を支えているんだ」という誇りがみなぎっていたからだ。逃げ出さず、仕事に向き合う姿はかっこいい。
そこで働く誰もが新幹線を愛している。新幹線の50年を支えた人々は運転士や車掌、アテンダントだけではない。夜間の、文字通り「陽の当たらない場所」で奮闘する仲間がいる。彼らが「世界一安全な新幹線」の実績を築いてきた。映像には、鉄道マンが仲間たちへ抱く尊敬が映し出されていた。この映画は元新幹線運転士、大石和太郎氏のもう一つの功績だ。
東海道新幹線よ、ありがとう。
そこでいま働く人々、働いてきた人々すべてに感謝。
新幹線0系電車(交通科学博物館)
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