このほか、シスコが事業戦略の柱として強調していたのが「IoE(Internet of Everything)」だ。IT業界では、近年「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」という概念が注目を集めているが、IoEとはその概念をさらに発展させ、モノだけではなく人間や場所、といったありとあらゆるものがインターネットにつながる世界を示した概念である。
現在でも、住宅そのものや家電などをインターネットにつないで省エネなどの最適化制御を行う、「スマートハウス」などのビジネス分野が盛り上がっているように、多くのものがインターネットにつながることによって、新たなビジネスチャンスが生まれることは想像に難くない。「IoEの実現によって、2022年までに約76兆円の経済効果が生まれる」(平井社長)という。
こうしたIoT、IoEといった概念はさまざまな産業で取り入れられ始めている。温度や光を感知するセンサーを使って、温度調整や水やりのタイミングなどを常時監視し、必要な作業を自動化する「農業クラウド」などはその典型例だ(参考記事)。
平井社長は「特に製造業の現場に注目している。日本ならではの、高度な製造・生産ラインにセンサーを組み込むことで、モノづくりにさらなる変革を起こせる。今後は“スマートファクトリー”が増えていくだろう。日本発、世界に通じるIoEソリューションを開発していく」と、今後もIoE分野に注力する意気込みを見せた。同社は、製造業とIoEを組み合わせたソリューションを共同開発するため、日本のスタートアップ企業「smart-FOA」に出資をすることも発表している。
このほか、加速する企業のクラウド利用に合わせて、新たなクラウドサービスも提供していく。2014年3月にはユーザーのプライベートクラウドとパブリッククラウドの柔軟な連携を実現する「Cisco Intercloud」を発表。同社の強力なパートナーであるデータセンター事業者をソリューション事業者へと変革させ、共に成長していこうという戦略を見せている。
また、クラウド投資自体に対しても、従来の“コスト減”というネガティブな投資ではなく、新たなビジネスを創造するポジティブな投資にするためのコンサルティングサービスも展開していく。これら、クラウドやコンサルティングサービスといった新たな取り組みを事業に加えることで、改めて“世界トップのIT企業”を目指す姿勢を強調した。
「われわれは今後も、ナンバーワンITカンパニーを目指していく。ここで言うナンバーワンとは、最も大きな業績を実現することではなく、最も大きな価値を提供することだ」(平井社長)
IT業界におけるシスコの影響力は大きい。今後、シスコが注力するテレワークやIoEといった分野は、ビジネスや生活を大きく変えていく可能性がある。ビジネスパーソンとして、これらのITトレンドは把握しておく必要があるだろう。
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