おサイフケータイとは違う――iPhone 6/6 Plusで使える「Apple Pay」で何ができる?一般的なNFCとは互換性なし(5/5 ページ)

» 2014年09月17日 10時07分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),Business Media 誠]
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Apple Payの仕組みをそのまま日本のおサイフケータイとして使うのは難しい

 もうお分かりかもしれないが、現時点ではiPhoneで日本の「おサイフケータイ」を利用するのは難しい。つまり「モバイルSuica」「楽天Edy」「nanaco」「WAON」といったサービスをiPhoneに登録して、買い物やポイント付与、公共交通の利用……はできないということだ。

 Apple Payでは、クレジットカードを1枚追加するごとに、Passbookのカードの1つとして次々と登録が行われる。登録されたクレジットカードはPassbookの一部として管理され、それ以外の使い勝手は従来のPassbookそのままだ。本来であれば、モバイルSuicaなどのおサイフケータイのサービスも“カード”の1つとして登録できるはずなのだが、「Apple PayがNFC+セキュアエレメントを外部に開放していないこと」「そもそも(Apple Payが採用する)Type-A/Bと(おサイフケータイが採用する)FeliCaは互換性がないこと」という2つの理由により、Passbookへの登録もできずに利用する手段がない。このあたりが日本で利用するうえでの残念なポイントだ。

Apple Payは「囲い込みサービス」、利用できるのも当面は米国のみ

 ここで1つ分かるのは、現時点でAppleは「Apple Pay」をiPhone以外の環境に展開する計画はなく、さらに他の決済サービスをiPhoneに呼び込むつもりもないということだ。

 とはいえ、仮に米国の携帯電話ユーザーの1割弱がApple Payを利用したとすれば、3000万人規模のユーザー数となる。これは非常に大きなインパクトだ。しかもiPhoneを使うような層は比較的富裕で購買意欲が高く、決済回数や売上全体でみても優位に働く可能性が高い。

 米国以外ではどうだろうか。iPhoneユーザー率の低い欧州などでは利用者も少ない傾向が予想できる。逆に、米国より高いユーザー率を誇る日本ではそもそもFeliCaのインフラが中心で、Apple Payとは決済方式が異なるという事情もある。現在、Appleは同サービスを海外展開すべく各国小売店やカード発行会社との交渉を進めているといわれるが、国内外での温度差は大きいというのが筆者の見解だ。米国内でもWal-Martなどの事業者はApple Payへの対応を拒否したと報じられており、必ずしも盤石ではない。

 以上を踏まえると、Apple Payの導入がAppleの業績を押し上げる可能性はそこまで大きくないというのが筆者の意見だ。ユーザーに利便性を提供するものの、エコシステムは完全に閉じられており、「囲い込みサービス」の一種だといえる。今後、iPhone内のセキュアエレメント利用を外部に開放する一方で利用料を徴収したり、Apple Payそのものを他の端末プラットフォームに提供することで手数料ビジネスを成立させる可能性もあるが、いまのAppleにそうした意図はあまり感じられない。

同じ米国のNFC読み取り端末といっても、7-Elevenの端末は今回のApple Payには対応していない。ただこれはWal-Martのように取り扱いを拒否したというよりも、端末の世代が古いなど準備が整っていないことが理由と思われる。実際、ここ1年ほどで新型端末への交換が進んでいるので、遠からず米国7-ElevenでもApple Payが使えるようになるのではないか
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