おサイフケータイとは違う――iPhone 6/6 Plusで使える「Apple Pay」で何ができる?一般的なNFCとは互換性なし(3/5 ページ)

» 2014年09月17日 10時07分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),Business Media 誠]

Googleの二の轍を踏まないために――スムーズなサービスインができた背景

ISIS Walletアプリ。筆者はNexus 5を米国で利用しており、SIMカードも対応のものを導入しているが、端末が未対応のため利用できないなど、利用環境はかなり制限されている

 かつてGoogleが「Google Wallet」でモバイルペイメント市場に参入した際(参考記事)、潜在的な成長市場をGoogleに牛耳られることを警戒した携帯キャリアらは、一致団結してGoogleの徹底排除に乗り出した。当時、Google Walletアプリを標準搭載した「Galaxy Nexus」のスマートフォンをGoogleが携帯キャリアを通じて販売しようとした際、取り扱いを拒否されたというのは有名なエピソードだ。Googleの攻勢を押さえつける一方で、米国の携帯キャリア連合3社(AT&T、T-Mobile、Verizon Wireless)は「ISIS」という合弁会社を設立し(参考記事)、2013年末に「ISIS Wallet」というサービスを開始している。

 Googleを警戒していたのは米国の携帯キャリアだけではない。むしろ欧州の携帯キャリアのほうがその傾向が強いといえるかもしれない。

 携帯キャリアの業界連合であるGSMAでは、電話番号など携帯電話の通信に必要な情報を記録した「SIMカード」と呼ばれるICチップ(セキュアエレメント)に決済情報を記録する「SIMカード方式」によるモバイルペイメントを推進している。一方、Google Walletでは端末本体にセキュアエレメントを内蔵する「内蔵方式(eSE)」を採用していた。SIMカード方式の場合、決済情報など鍵となる情報を管理するのは携帯キャリアであり、内蔵方式の場合は端末メーカー(もしくはサービス事業者)となる。重要な情報管理を巡り、欧州を中心とした携帯キャリア連合とGoogleの間で綱引きが行われていたというのが、前述のエピソードの根幹というわけだ。

 結局、GoogleはGoogle Walletの立ち上げに失敗し、携帯キャリアはSIMカード方式によるモバイルペイメントの立ち上げに苦戦するなど、「NFCはだめかもしれない」というネガティブなイメージが付いて回るようにまでなってしまった。Googleは内蔵方式によるサービス推進を諦め、セキュアエレメントを使わない「HCE(Host Card Emulation)」というNFC技術へとシフトし始めた。一方の携帯キャリア連合も、一連の行動がサービス普及を阻害するだけだったという反省から、一転して端末メーカーやサービス事業者の動きに寛容になり、むしろNFC普及をバックアップする方向へと転換しつつある。Apple Payが発表されたのは、ちょうどこの転換期に当たったため、Googleほどの逆風を受けることなく、スムーズにサービス提供へとこぎ着けたのだ。

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