「NerveNet」をご存じですか?──災害対策から生まれた技術のさらなる可能性松岡功の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年09月10日 08時00分 公開
[松岡功,Business Media 誠]

著者プロフィール:松岡功(まつおか・いさお)

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ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。

 主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。ITmedia エンタープライズでも「Weekly Memo」を連載中。


 「携帯電話やインターネットが、つながらない」

 東日本大震災では、通信回線施設の被災や回線そのものの混雑で、家族の間で安否を確認することもままならなかった。以来、災害に強い通信ネットワークを実現しようと、さまざまな技術開発が進められている。その1つに「メッシュ型の地域ネットワーク」がある。

 その技術・製品である「NerveNet(ナーヴネット)」の仕組みが非常に興味深い。災害対策だけでなく、社会の新たな通信基盤となる可能性があるためだ。共同研究プロジェクトメンバーの1人である日本ユニシス 総合技術研究所インキュベーション室データ工学ラボ研究員の中川靖士氏の説明をもとに、通信ネットワークの新しい姿をひもとこう。

 NerveNetは、独立行政法人である情報通信研究機構(NICT)が開発した耐災害ネットワーク技術だ。このほど、その実用化研究を東北大学、ITベンダーの日本ユニシス、ビジネスコンサルティング会社のフィンチジャパン、ネットワーク構築会社のナシュア・ソリューションズが共同で受託した。従来の携帯電話や固定電話網、インターネットとは異なり、各基地局のサーバに情報を持ち、かつ基地局同士が網の目のようにメッシュで接続された通信ネットワークである点を特徴とする。“自動経路生成機能”を備えていることから、災害が起きた地域の通信回線が仮に損傷しても、メッシュ状に配備された基地局を経由して回線接続を維持できる(図1参照)。

photo 図1 「NerveNet」による通信の耐災害性強化のイメージ。左側にある既存インターネットはツリー状のネットワーク形態なので、切断した回線の先にあるエリアは通信不能になる。それに対し、右側のNerveNetを導入したネットワーク形態では基地局がメッシュで接続されているので、切断した回線の先にあるエリアでも別の基地局を通じて回線接続を維持できる(出典:日本ユニシスの資料)

 NerveNetは2014年9月現在、東北大学のキャンパスや宮城県女川町の海岸において防災、減災のために試験導入されている。

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