なぜ『朝日新聞』は池上彰さんの連載原稿を掲載しないと言ったのか窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2014年09月09日 08時00分 公開
[窪田順生Business Media 誠]

『朝日新聞』がヘソを曲げているワケ

 こういう話を聞くと、愛国心あふれる方たちの場合、「この期に及んでまだこんなことを言っているとは、やはり朝日は反日だ」とかなるのだろうが、個人的には『朝日』がここまで頑なにヘソを曲げるのは、「反日」だからではないと思っている。

 以前のコラムにも書いたが、吉田証言に関しては『朝日』の対応はとてもまともとは思えない(関連記事)。池上さんの「言論」をこっそりと闇に葬りさろうとしたのも、現場記者からも怒りの声が出たように明らかに常軌を逸している。

 ただ、これらの異常な行動のすべてを「反日だから」で片づけてしまうのは乱暴だと言っているのだ。

 いろんな企業で報道対策をしてきた経験から言わせていただくと、ここまで『朝日』の対応が酷い背景には、国家間の壮大な陰謀論とかではなく、もっとくだらない理由が見えてくる。それは、経営陣を「元記者」が占めているということだ。

 『朝日新聞』の社長は代々、政治部と経済部が交代でやっている。先ほどの全社メールを送った木村社長は政治部出身だ。副社長は経済部、ほかの役員にもずらっと記者出身者が並ぶ。

 それがどうしたと思うかもしれないが、これは海外のジャーナリストなんかに言わせると、かなり「異常な組織」だという。なぜかというと、世界的にみれば、新聞社だろうが、テレビ局だろうが、巨大企業の経営というのは「経営のプロ」が担っているからだ。

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