京急電鉄のカジノ構想で注目、「統合型リゾート(IR)」が“うさんくさい”ワケ杉山淳一の時事日想(6/6 ページ)

» 2014年08月29日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]
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都市型リゾート構想が隠す「賭博」

 バブル崩壊、リゾート金融ビジネスの破たんから20年以上も経って、また企業や政府が「リゾート」という言葉を使い始めた。8月26日付けの窪田順生氏のコラム「あれほど騒がれた「お台場カジノ」の話がぷっつりと消えた理由」にも紹介されているように、お台場では「IR(Integrated Resort)」という名の「統合型リゾート」が取りざたされている。私は過去の経験から、この「リゾート」という言葉の使い方が気になる。

 過去のリゾートバブル崩壊は「本来は金融商品ビジネス」を「リゾート」というイメージのよい言葉でごまかした結果である。では、最近の「リゾート」は何をごまかしているか。「カジノ」だ。

 「統合型リゾート」はマカオやシンガポールにみられるような、ホテルやショッピングモール、劇場などアミューズメント施設などを集積した業態という。商業の集積だけなら現在も可能。しかし「統合型リゾート」はここに「カジノ」が加わる。「統合型リゾート」は、政府のカジノ法制化を前提としている。

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 「カジノ」については賛否がありそうだ。むしろ批判が多いかもしれない。そこでまず「統合型リゾート」という器を作り、「その一部ですよ」とする。さらに「統合型リゾート」を「IR」と略す。なんだか巧みに後ろめたいことを隠しているようだ。もちろん海外向けには世界共通の「カジノ」と呼んだ方が分かりやすい。しかし実態は「賭場」である。これをしっかり認識したい。カタカナ言葉に誤魔化されてはいけない。

 「賭博」「賭場」と書いたとたんに任侠映画の世界を連想するから、「現代はカジノと言いたい」という気持ちは分かる。しかし和風に言えばカジノはやっぱり賭場だ。身も蓋もないかもしれないけれど、言葉を換えても、身も蓋もないものを作ろうって話であろう。「賭場」と呼んだ瞬間に、過去の日本の賭博文化から、成功例やリスクが再発見できるかもしれない。参考書として北方謙三著の小説『望郷の道』をオススメする。前半は賭場稼業のサクセスストーリーだ。

 京急電鉄にとって、蒲田高架化事業、羽田空港輸送プロジェクトに目処が付き、新たなビジネスチャンスを模索したいという気持ちがあるだろう。賭場も面白そうだけど、そろそろ油壺延伸計画を再起動したらどうか。京急電鉄が手がけるべき、本来の意味でのリゾートビジネスは三浦半島にあると思う。


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