京急電鉄のカジノ構想で注目、「統合型リゾート(IR)」が“うさんくさい”ワケ杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)

» 2014年08月29日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]
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なぜ「リゾート」が乱開発されたか

 なぜバブル時期にリゾート開発が進んだのか。その理由は国民の余暇開発とは関係ない。会員制リゾートビジネスが金融商品だったからだ。リゾート会員権は高額で取引された。売り出し価格で購入すれば、当時の預金金利よりさらに利回りが大きかった。そして、すべてとは言わないけれど、その価値には実態がなかった。

 ゴルフ場で説明する。まず、開発会社は二束三文の価格で山を買う。そこを整地し、ゴルフ場を整える。そこにかかったすべての費用の総額と利益を乗せて、募集会員数で割る。これがゴルフ会員権の売り出し価格となる。開発会社は会員権をさばいたところでもうけを回収してビジネス終了。ゴルフ場はプレイ料金で細々と運営していく。

 ゴルフ会員権は不動産証券に準じた担保があるという認識があり、高値で売買された。しかし、もともと二束三文の土地だから、不動産としての担保価値はほとんどない。施設整備費とデベロッパーの利益分を除けば、売り出しの段階で額面より価値は低い。ひどい開発会社になると、募集会員数の倍以上の会員権を乱造して売った。いくつかのゴルフ場は、正規会員にもかかわらず予約が取れない。そんなゴルフクラブが次々と破たんし、会員権は紙切れになった。リゾートバブル崩壊である。

 つまり、バブル期のリゾートビジネスは、都市部の土地価格高騰の夢を地方で無理やり再現しただけだった。こんなビジネスのために、私たち国民は大切な自然を破壊されるところだった。

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