「あなたは旧システム、入替予定」と会社から言われたら、どうする?サカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/3 ページ)

» 2014年08月25日 08時25分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

なぜ、企業は中高年従業員の再教育に熱心ではないのか

 古いシステムを改修しながら使っていくと、一定の時期が経過した頃から、改修のスピードや内容に対して、利用している人たちのニーズなどが追いつかなくなることがある。これは珍しい話ではありません。

 その結果、一から新しいシステムを用意したほうが安上がりという結論に達し、古いものが一気に捨てられる……こういう経験は、多くの人が持っているでしょう。

 ビジネスの現場における組織に関しても、似たようなことが、当然起こっています。少し前には、中高年の再教育が大きなテーマになっていましたが、最近はあきらめムードが漂っています。

 一定の年齢よりも下の世代に対し、新しい育成プランを提示して、彼らに今後を委ねてしまう。そこに多くのリソースを投下して成長させるという方針。要は「システムの入れ替え」を行っている企業は多いのです。

 かつては、経験値が高く、能力も可視化されていて、ある程度「読む」ことができる人たちは、組織にとってとても貴重な存在でした。しかし時代の流れが早くなり、組織に対して求められることが高度になる一方だと、その経験や「ある程度、先が見えてしまう」人たちだけでは、対応できなくなる。

 しかも、経験のある人たちほど、再教育に対してコストも時間もかかってしまう。経験が邪魔をして、新しいことが吸収できない可能性だってゼロではない。企業が新しいことにチャレンジする場合、そこに配属されるメンバーの多くはフレッシュな人材であるケースが多い理由は、これらの要素が複雑に絡みあった、ひとつの結論だといえるかもしれません。

旧システムと呼ばれる人たちの、シンプルなサバイバル術

 さて、線引きされた上の世代、つまり旧システムの人たちには、組織が現状を維持するという役割が与えられます。そして、新しいシステムが正常に稼働しだして、古いシステムが必要なくなった時点で、お払い箱。世代交代といえばそれまでのことですが、なかなか切ない光景です。新しいシステムの下支え的な役割が用意されればいいのですが、それもないというケースも、最近では少なくありません。

 「飼い殺しは嫌だ、新しいことにチャレンジする!」と、組織を飛び出して自らなにかことを起こせる(その典型例が、起業でしょう)だけの能力を持っている、もしくは自信がある人なら問題ありません。逆にチャンス到来と思って、この機会を生かすべきです。

 しかし、そういう力も気持ちを備えていない人はどうしたらいいのでしょう? 結論としては「なにがなんでも今の場所にしがみつく」という選択肢がベストだと、私は考えています。

 ここで冒頭の話に戻ります。いくつになっても学ぶことができる、そして成長することだってできる、という話に嘘はないと私も思ってはいます。けれども、それは「今までも、そうし続けてきた」という実績ある人なら、説得力もある。今までなにもしてこなかった人が、心機一転、新しいことにチャレンジ! というのは、逆にリスクが大きすぎると考えるべきでしょう。

 自分自身のこれからの成長を大きく見込みすぎず、現状維持にまずは注力してから、更なる飛躍のための努力をする。そう、力を入れる順番を間違えないようにしなければ、今の場所を失って、新しい場所も得られない、という悲劇が訪れてしまうのです。

なにがなんでも今いる場所にしがみつく、それも賢い選択(写真はイメージです)

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