日本よりも海外で注目される「タイ代理出産問題」、報道姿勢に大きな違い伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)

» 2014年08月21日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

日本での報道が“あいまい”な理由

 8月17日付けのバンコク・ポスト紙(電子版)に掲載された記事(参照リンク)は「『シゲタ・ミツトキ』とは何者なのか」という言葉で始まる。そしてこの男性がていねいで普通の人に見えたと言う代理母の証言を紹介しているが「コンドミニアムへの捜索で、当局の言う『赤ん坊工場』が発覚してから2週間ほど経ったが、24歳の日本人ビジネスマンの素性と、理由は分からないことだらけだ」と続ける。

 それでも、この記事では彼が数多くの子供を作ろうとした動機をこう書いている。2013年、シゲタ氏に2人の代理母を紹介したニュー・ライフ・グローバル・ネットワークの共同創設者に対する取材から「『シゲタ・ミツトキ』が日本で選挙に出て勝利するために、忠実な『有権者』を大勢作り出す、という漠然とした計画の一環で、毎年12人以上の子供を代理出産させようと計画しているという話が浮上した」と指摘している。

 さらに、この共同設立者はシゲタ氏が「精神的にアンバランスである」とスタッフから聞かされ「インターポールや英BBC放送や米CNN、さらに日本大使館にも警告の連絡をした」と語ったと報じている。

 バンコク・ポストはさらに深く突っ込む。同紙は「シゲタ・ミツトキ」について、日本の企業「光通信」の創設者の息子であるというウワサがある、と書いた。そして「伝えられるところでは、日本で著名な弁護士から日本の大手メディアに対して、この件、特にシゲタ・ミツトキ氏の個人情報について明らかにしかねない情報を報じないよう警告する文書が送付されている」と指摘する。

 日本での報道が釈然としない理由は、ここにあるのではないか。現時点ではタイ当局も彼を何らかの容疑で立件するわけではなく、あくまで当人に出頭して事情を話すよう呼びかけているに過ぎない。それゆえに、日本の報道機関も実名など、個人を特定できるような情報を報じることにためらいがあるのだろう。

 だが、日本国内で情報を制限するよう警告しても、国外で情報が出てしまうことは阻止できない。インターネットで瞬時に国外の情報も取得できるこの時代、Web上で検索すれば「シゲタ・ミツトキ」に関する情報をすぐに見つけられる。ましてやタイのように、警察署で容疑者をカメラの前に座らせて姿をさらすことが常態化している国や、きちんと取材をしていたり、警察が公表している情報ならば実名を報じることに寛容な米国などでは、弁護士などの警告自体が意味をなさない。

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