iBeaconそのものは、基本的「距離」と「相手」を認識する方法しか提供しない。が、この情報を利用し、スマートフォンアプリにさまざまな機能や仕掛けを施すことで、この先の便利な機能やサービスを実現できるようになるというわけだ。
例えばこんな事例がある。
ショッピング中、あるアパレルショップに近づいた。「ピコーン」。“今”、実施されている最新セール情報が(自分では何も操作していないのに)自分のスマホへ自動で届いた──。
このとき、iBeaconはどう機能しているのか。
店の入り口付近に置く「ビーコン発信器」を、BLEの電波が届く半径10メートルほどの距離でiBeaconの信号をキャッチできるような設定にしておく。情報を配信したい客には、あらかじめ該当するアパレルショップの「専用スマホアプリ」をスマートフォンにダウンロードさせておく。
客が店から半径10メートルの距離まで近づいたら、アプリがこの(ショップ固有の)iBeacon信号に反応し、サーバから最新情報を取得してくる仕組みを構築しておく。これで、客の目からは「iBeaconで、最新のセール情報が自動的に送られてきた」ように見える。
広大な売り場で、自分がほしい商品はどこにあるのかをスマホが教えてくれる──。仕組みとしては、こちらのほうが分かりやすいかもしれない。
iBeaconはiPhoneとビーコン発信器との“距離”をかなり高精度に測定できる。店内・館内へ複数のビーコン発信器を設置しておく。iPhoneアプリがそれぞれのビーコン発信器の位置関係を把握し、ビーコン発信器より得られた信号強度を計算することで、iPhoneを持つ利用者が店内のどのあたりにいるのか、おおよその位置を特定できる。
一般に、位置情報を把握するシステムの1つであるGPSはご存じだろう。GPSは人工衛星の情報から位置を測定する大がかりな仕組みのため、誤差が数十メートルほど出てしまい位置の把握にも若干時間がかかる。2014年現在のスマホは携帯電話のネットワーク(3G/LTE)やWi-Fiといった、地上から出ている電波の信号と合わせて補正し、測定精度を高めている(この機能を、A-GPS/Assisted-GPSと呼ぶ)。ただ、これでも十数メートルほどの誤差は残り、かつ、屋内では正確な位置測定が行えない(GPSからの信号が得られないため。ただ、屋内に入る直前までの情報から、どの施設に入ったか──などの情報はつかめることもある)。
これに対しiBeaconは、そこから屋内のさらに細かい位置測定を可能にする。この特徴により、ショッピングモールや高層ビル内で地図を用意して正確な順路案内を行うような「屋内版ナビゲーション」に利用できるというわけだ。
スーパーマーケットやホームセンターなどで、自分が購入したい商品をあらかじめ登録すると、お店のどこに目的の商品があるかをアプリが誘導してくれる、などの利用シーンが考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング