2014年8月11日、JR北海道は新たな脱線事故対策を発表した。レールにゆがみなどが見つかった場合は「直ちに貨物列車に対して速度制限を実施する」という。
この背景には、2012年4月26日にJR北海道江差線の泉沢駅―釜谷駅間で起きた貨物列車の脱線事故がある。この事故の直接の原因は「貨物列車のコンテナの内部で積み荷のバランスが悪く、コンテナ貨車の台車が不安定になった」とされた。
ただし、線路についても「直ちに整備するレベルではないが、最大約28ミリメートルの変異(ズレ)があったため、貨車のバランスを崩した可能性がある」と指摘されている。
国土交通省運輸安全委員会「鉄道事故調査報告書 日本貨物鉄道株式会社 江差線 泉沢駅〜釜谷駅間 列車脱線事故」より
JR各社は基準限度以内の要整備地点について、1カ月以内に補修するという内規だった。JR北海道はこれに加えて、発覚後ただちに時速45キロメートルの制限をかける。一方、JR貨物は荷主とその取扱業者に任せていた積み荷のバランスについて徹底するとともに、新たに貨車ごとバランスを測定する装置を導入するようだ。
今後、JR北海道は「JR貨物が積み荷のバランスを配慮していないかもしれない」という前提で、線路整備や速度制限を実施する。JR貨物も「JR北海道がきちんと線路を整備していないかもしれない」という前提で積み荷のバランスを慎重にチェックする。
自分の仕事を全うするだけではあるけれど、どうも疑心暗鬼の様相になりそうだ。JR北海道の線路でJR貨物の列車が脱線する。この場合、どちらに原因があるか。今まではJR北海道の保線データ改ざんが問題になっていた。しかし今回の積み荷の件のように、JR貨物側に非があるかもしれない。車両の整備が問題となった場合は、両社が点検業務を委託する整備工場も絡んでくる。
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